シリーズ『くすりになったコーヒー』


 長野県伊那市、中央アルプスと南アルプスに挟まれた景色のよい町へ行ってきました。とは言っても生憎の梅雨空で、駒ヶ岳も何もかも姿を隠して見えませんでした。何をしに行ったかと言いますと、上伊那医師会の先生から声をかけられて、地域のお医者さん相手にコーヒー健康談議をしてきたのです。



●お医者さんはコーヒーの効き目に大変興味をもっています。


 上伊那医師会「わかいの会」でのコーヒー談議は1時間で終わりましたが、皆さん本当に真剣に聞いて下れました。「コーヒーで病気を予防する」ということに、「初めて耳にした」というお医者さんも居られましたが、多くのお医者さんは何処かで何かの情報を耳にしたことがある様子でした。


●疫学調査で繰り返し確認された効き目ならば、日常診療にも活かせるはずです。


 ということで、話の随所にそういう応用ができそうなネタを取り入れました。直ぐにでも患者さんに試して下さることを大いに期待している所です。


●フランス人はカフェオレ、イタリア人はカプチーノと言った具合に、コーヒーと牛乳の相性は抜群です。


 この話をしましたら、質問がありました。


●「牛乳を飲むと前立腺癌になる」という患者がいるのだが、それは本当の話か?


○ 解答:それはウソです。少なくとも多くの日本人にとってはウソです。


 話の出所はアメリカの小児科医で、昔「1歳前の乳児には牛乳を飲ませない方がよい」という論文を書いた人です。この話自体は良いのですが、段々大袈裟になって、ついに牛乳を飲むと癌になるというところまで行ってしまいました。ただしこれは、肉ばかり食べているアメリカ人の話なのですが、それに目をつけた出版社が本を出して、それが日本語に翻訳されて、肉をそれほどは食べていない信州信濃にまで伝わったのです。


 翻訳本は次の2冊です。


『牛乳には危険がいっぱい』


『乳がんと牛乳』


 これらを真似て日本で書かれた本も出ていますから要注意。


『牛乳を信じるな』


『牛乳神話完全崩壊』


●本当の話:肉食中心のアメリカ人が牛乳を飲み過ぎると癌のリスクが上がります。


 何故かと言えば、身体に悪い飽和脂肪酸の食べ過ぎになるからです。牛乳には脂肪が多く、しかもほとんど多くが悪玉の飽和脂肪酸です。ですから肉と牛乳を合わせて食べ過ぎれば癌か心臓病に罹るリスクが上がります。それがアメリカ食の欠点なので、日本食ブームが起こったのです。


アメリカ人に当てはまることでも、日本人にはウソなことは沢山あります。「牛乳は危険」の話は日本人にはウソですが、かなり悪質なウソと言えます。何故悪質かと言いますと、「国別データを隠している」からです。信じた日本人が牛乳を飲まなくなれば「鬱病も含めて生活習慣病が増える」ことは確実です。


●牛乳は、不足しがちなカルシウム源として大事である(詳しくは → こちら )。


 日本人にはこちらの方がよほど重要な情報です。コーヒーと牛乳のマッチングは、栄養的にも最善と言えます。


・・・ということで、「わかいの会」の皆様、宿泊のお世話まで頂いて本当にありがとうございました。


(第67話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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