シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーを飲む人は痛風になりにくい(詳しくは → こちら )。


 それだけではなく、コーヒーを飲んでいる人は、飲む量に比例して、血清尿酸値が低くなります(詳しくは → こちら )。


 血清尿酸値が高いと針のような尿酸結晶ができてしまいます。もしその場所が指の関節の近くだったりすると、神経が刺激されて激痛に襲われるのです。痛風と呼ばれる病気です。


 痛風は、プリン体を多く含む食べ物ばかり食べていると起こります。痛風の経験者は「こんな痛みは二度と御免だ」と言って、プリン体を食べないようにしているようです。


でも、


●プリン体は核酸(DNA)なので、これを含まない食べ物はない。


 ですからプリン体を食べないわけには行かないのです。あえて言えば、レバーと白子には特に多いので、焼き肉や焼き鳥、寒い季節の鍋料理に要注意です。
ビールがよくないという話もよく聞きますが、これは利尿作用で脱水状態になると、血清尿酸値が高くなるからという理屈です。ですから、レロレロにならない限りは根拠が乏しいというべきでしょう。


 さて、論文の内容を図にして説明しましょう。この図から次のようなことが解ります。




●コーヒーは血清尿酸値を下げる(左端)。


●デカフェタイプも効いているように見えるが、統計的には効くとは言えない(左から2つめ)。


●お茶には効果が見られない(右から2つめ)。


●カフェインが効いているわけではない(右端)。



 血清尿酸値を下げる食べ物はほとんどないので、コーヒーの効果は稀に見る効果と言えます。他にもたくさん論文が出ていますから、もはや疑う余地はありません。


 では、コーヒーの何がどう効いているのでしょうか・・・確かな情報はありません。唯一考えられるのは、クロロゲン酸からできるカフェ酸です。でもカフェ酸の効果は特効薬アロプリノール(ザイロリック GSK社、他)には及びませんし、深く煎ったコーヒーには入っていません。ですから、カフェ酸以外にも有効成分があるはずです。可能性はカフェインからできてくる1−メチル尿酸にありますが、証明するにはまだ時間がかかります。


 街のお医者さんのなかには、昔から痛風患者にコーヒーを勧めている人が居ます。もちろん無糖コーヒーしか勧めません。何故なら、砂糖は痛風の増悪因子だからです。もし、どんなコーヒーがよく効くのかわかれば、コーヒーを飲んで砂糖を止めて、プリン体や甘すぎる果物も少なめにすれば、痛風や高尿酸血症の予防法が確立するはずです。


 ところで、痛風の発作のときはアロプリノールを中止します。その理由として言われていることは、無理に尿酸濃度を下げると、尿酸結晶の塊が壊れて、針のような結晶が飛び散って、神経を刺して痛い・・・というのです。ただし、この現象が目(顕微鏡)で確認されたわけではありません。


 もう1つ不思議な事実は、「尿酸値が低過ぎると逆によくない」ということです。つまり尿酸が身体にとって何か役立っているらしいのです。その根拠は、「尿酸の抗酸化作用はビタミンCよりEより何よりも強い」という実験的事実です。


【医療関係者の方へ】尿酸値の下げ過ぎは逆効果のようですから、増量が必要な症例ではコーヒー併用も選択肢の1つです。個別に試みては如何でしょうか。


(第62話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は下部のバナーからどうぞ