シリーズ『くすりになったコーヒー』


 C型肝炎訴訟が一応の決着を見たので、患者は国のお金で先端治療を受けられるようになりました。肝臓がんへの不安の解消が一歩前進したと思います。


●ペグインターフェロンとリバビリンの併用で、60〜70%の患者が回復する。


 そうです。先端治療といえども、効き目はこの程度です。不幸にして効かなかった人たちは、肝臓がんへの不安を抱えたままか、場合によっては副作用の後遺症に悩みます。厚労省の専門家会議では、効かなかった患者には、しばらくしてもう1度同じ治療を受けるチャンスを与えるとのことです。くすりの感受性が微妙に変っているという偶然に期待するのです。


 しかしもっと問題なのは、C型肝炎に罹っていても、治療の機会をもてない患者の場合です。長く仕事を休めない、仕事を離れると復職できなくなる、副作用が強すぎて耐えられない、他の病気で薬を使えない・・・などの理由で受けたくても受けられない人が大勢いるということです。


 そこで、ウイルス感染者に対するコーヒーの効き目を調べてみました。日本のデータ(図を参照)は厚労省研究班がホームページで公表したものです(詳しくは → こちら



 この図の詳しい説明はホームページに委ねるとして、ここでは結論だけまとめます。


●C型肝炎にかかっても、コーヒーを飲めば発癌リスクが低下する。


●1日に飲むコーヒーの量は2〜3杯がよい。それ以上飲んでもよいが人によっては逆効果になる。


●有効成分としては、抗炎症作用のあるカフェインとクロロゲン酸に期待する(未解明)。


●緑茶には効果が認められない。


 厚労省研究班とは別に、コーヒーから抗ウイルス成分が見つかりました。そのうちギ酸とカフェインの効果は以前からわかっていました(詳しくは → こちら )。新たに加わったのは、深煎りコーヒーだけにあるピリジニウムです(詳しくは → こちら )。


 総合してみますと、コーヒーの効果は「抗ウイルス効果」と「抗炎症効果」の和であることが伺えます。


●抗ウイルス効果:カフェイン、ギ酸、ピリジニウム塩


●抗炎症効果:カフェイン、クロロゲン酸、香りの成分((詳しくは → こちら )。)


 コーヒーがC型肝炎のがん化を抑える効果は薬物治療には敵いませんが、薬物治療にはない優れた特徴をもっています。何よりも第一に副作用の心配がありません。薬が効かない人、何らかの理由で治療を受けられない人は、コーヒーを飲むべきです。


●C型肝炎にかかったら1日に2〜3杯のコーヒーを飲み、機会を作って先端治療を受けることにする。


【医療関係者の方へ】肝機能が低下した人に、「コーヒーは刺激が強いから止めましょう」というアドバイスは間違っています。あくまでも個別の対応が望まれます。


(第60話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は下部のバナーからどうぞ