シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒーが糖尿病を予防することは、今や常識と言っていいほどになりました。間もなく発売される「コーヒーと医学(日本評論社)」にも詳しい解説が載ることになっています。


 問題は次のような質問への答えです。


●どんなコーヒーが一番よく効きますか?


 残念ながらこの質問に確かな答えはまだありません。かと言って、どんなコーヒーでもよいというわけでもありません(最新情報は → こちら )。


確実にわかっているのは、


●砂糖を沢山入れて飲むコーヒーがよいはずはない。


ということです。ですから、無糖ブラックで飲む癖をつけることが大事です。では、無糖ブラックで飲めるコーヒーとはどんなコーヒーでしょうか?その答えは2つのうちのどちらかです。


●苦すぎないコーヒー


●美味しさが苦味に勝っているコーヒー


 人間が感じる五味(甘味、塩味、酸味、旨味、苦味)のなかで、苦味だけがもっている特徴があります。それは「100万倍のそのまた千倍に薄めても苦いことがある」ということです。苦味以外の味は千倍以上に薄めると感じなくなりますが、苦味だけは想像を絶するほど敏感に感じてしまうのです。


 なぜ人は苦味に対してそんなに敏感なのでしょうか?


●天然の苦味のなかには死ぬほど強い毒がある。


 毒草に含まれているアルカロイドとかサポニンとか呼ばれるもののなかには、ほんの少しで人を殺す猛毒があって、どれも苦味を感じるのです。だから人は・・・というより陸上動物は、苦味に対して敏感に進化していて、強い苦味を感じると食べずに吐き出してしまうのです(安全な苦味を子供の化粧品誤飲防止に応用 → こちら )。


 コーヒーが嫌いな人とは、苦味に敏感に反応して、無意識のうちにコーヒーを毒だと認識する人のことです。ですから、苦くないコーヒーを飲めば好きになるはずなのに、一度味わった強い苦味に対して、それを毒と認識する記憶の「インプリント」が起こってしまうのです。これではいくら美味しいコーヒーでも簡単には好きになれません。


●苦すぎるコーヒーを飲んだ人には、コーヒーを嫌いになる人が多い。


「コーヒーは嫌い」という「インプリント」された記憶は早く捨てた方がよさそうです。なぜなら、コーヒーを飲まない人は糖尿病になる確率が高くなっているからです。そうならないために、無糖ブラックでも美味しく飲めるコーヒーを見つけるべきです。


●「コーヒーは苦いから嫌い」という人は、コーヒー好きの人に聞いて美味しいコーヒーを見つけよう。


 そうです。そうすれば生活習慣病の親玉とも言える2型糖尿病にならずに済みます。「良薬は口に苦し」ではありますが、コーヒーの場合は「少々の苦味は癖になる」が正しいのです。


 コーヒーに含まれているクロロゲン酸は、糖尿病治療薬のベイスン(武田薬品)やグルコバイ(バイエル社)と同じ効き目を示します。さらにニコチン酸はニコモール(杏林製薬)という高脂血症治療薬になっていて、糖尿病を予防してくれます。コーヒーには他にも有効な成分が色々含まれていますから、浅く煎っても深く煎っても、どんなコーヒーでも、美味しいコーヒーでありさえすれば、糖尿病を予防してくれるのです(詳しくは → こちら )。


 ウソだと思ったら、迷わずコーヒーを飲んで確かめましょう。 


(第58話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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