シリーズ『くすりになったコーヒー』


 コーヒーの香りを嗅ぐことと、飲んで味わうことと、その効き目がまったく違うことに気づいている人はいません。一口にアロマセラピーとか言っても、科学的根拠はまだ不足です。


●アロマセラピーの主役は天然の香り


 なかでもラベンダーと柑橘系(レモン)の香りが逆の効果を示すことは有名です。即効性の自律神経作用がよく調べられています。


●ラベンダーの香りの効き目


 副交感神経(迷走神経)刺激


 夜型効果

 アセチルコリン


鎮静・安静・安心


思考能力の亢進


●レモンの香りの効き目


交感神経刺激


昼型効果


アドレナリン


興奮・高進・刺激


運動機能の亢進


 では、コーヒーの場合はどうでしょうか? 実は複雑で、バラバラな結果が出ています。調べてみると、バラバラの原因は「味」と「香」がごちゃ混ぜになっているせいでした。というよりも、そうとしか言いようがないのです。「味」と「香」を区別した実験論文がありません。


 レギュラーコーヒーには大きく分けて2つあります。


●浅煎りコーヒー 酸味があって苦味はない。ほのかな甘酸っぱい香り。


●深煎りコーヒー 強い苦味があるが酸味はない。焙煎された火の香り。


 どちらの香りもコーヒー独特の香りであって、差は大きいにも拘らずコーヒーであると認知できます。一方、飲んで感じる味の方を比べてみますと、深煎りコーヒーは間違いなくコーヒーの味がして、目隠ししても間違えません。しかし、浅煎りコーヒーは、もし目隠ししてテストされたら、ほうじ茶(焙じ茶)か麦茶と答える人もいるでしょう。


 浅煎りと深煎りのコーヒーでは、香りの成分に共通点があるのですが、味の成分はまったく違っているのです。特に深く煎ったコーヒーの苦味成分は交感神経を刺激します。これに対して香りの方は、浅煎りでも深煎りでも副交感神経を刺激します。


 さて、深煎りコーヒーの苦味を減らして旨味を強調したコーヒーを淹れるには、熟練した技術と道具が必要です。素人が真似してできるものではありませんが、たった1つだけ抜け道があります。


●濃く淹れて薄めて飲む!(詳しくは高木誠の潤いドリップ→ こちら )。


 こうして淹れたコーヒーには苦味成分が減っているので、交感神経刺激作用も減っています。その代り、副交感神経を刺激するピリジニウム塩の作用が強く出て、胃腸の調子がよくなって気分も落ち着き、リラックスできるというわけです(詳しくは → こちら )。


 以上をまとめて結論を書くと、


☆☆☆深く煎ったコーヒーから強すぎる苦味を除けば、香りも味も副交感神経を刺激して、血圧が下がり気分が落ち着きリラックスできる。


 こんなコーヒーをラベンダーのそばに置いて飲むことは、欧米人にとっては至福の時間かも知れませんが、嗅覚が鋭敏な日本人にとってはわけが解らなくなるかも知れません。


「嗅覚は磨けば磨くほど鋭くなる」そうです。そのお話は又の機会に致しましょう。


(第57話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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