シリーズ『くすりになったコーヒー』


 慢性腎臓病(CKD)は年齢とともに進行するので、早く進行すると、生きている間に腎機能が失われてしまいます。放っておけば体中に水と老廃物が溜まって死んでしまいます。つまり、人工透析を余儀なくされてしまうのです。そうなりますと自分自身も大変だし、保健医療にも多大な負担が掛かります。


 血液透析を必要とする重症のCKDのことを末期腎不全と言い、発症する時期をある程度予測できます。そのための検査値(マーカー)が推定糸球体濾過量(eGFR)です。eGFRは通常の健康診断で測定する血清クレアチニン値(Cr)を使う計算で求めることができます。




●eGFRは、ネット計算で簡単に知ることができます(詳しくは → こちら)。


 さて、今年3月のことでした。米国のジョーンズ・ホプキンス大学発の論文が有名な米国腎臓病学会誌に掲載されました。毎日飲むコーヒーが1杯増すごとに、CKDを発症するリスクが3%ずつ減少するというのです。3杯なら9%になりますから、腎機能低下と年齢増が競い合って、ギリギリ・セーフとなる確率が高まります(詳しくは → こちら)。




 これだけではありません。猛烈な残暑が続く9月半ばのこと、ポルトガルの研究者の論文が発表されました。透析直前のeGFR15からCKD黄色信号が点る60で、かつタンパク尿が認められる腎臓病患者4,863人を、主にコーヒーから摂取しているカフェインの1日摂取量で4段階に層別しました。そして10年間の死亡者数を層別に比較したのです。結果を図にまとめて示します(詳しくは → こちら)。




 カフェインを摂っていない群は、10年間に40%の人が死亡しているのに対して、カフェインを摂っている群の死亡率は30%でしかありません。残念なのは、図の「カフェインあり群」の3つの間にカフェインの量による差が見られなかったことです。近い将来、交絡因子などの処理について、更に詳しいデータが出てくることを期待しています。


(第361話 完)


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