シリーズ『くすりになったコーヒー』


 3月28日から3日間、岡山で開かれた「日本薬学会第130年会」というのに行ってきました。ポスターで2つ発表したのですが、どちらも大勢の観客で大賑わいでした。この場を借りて報告します。



 ポスター発表会場は県営体育館「桃太郎アリーナ」でした。何しろ8千人もの参加者のせいで、シャトルバスでの移動は大混雑・・・学会と言うよりバス待ちの根競べみたいでした。桃太郎の鬼退治もこれほどのんびりはしていなかったと思います。


 さて、演題173番は、「カフェインとよく似た構造の尿酸と1−メチル尿酸が、活性酸素の素になる酵素・キサンチンオキシダーゼを阻害する」というもので、HAB研究機構との共同研究でした。少々尿酸値が高くても、コーヒーさえ飲んでいれば大丈夫という内容で、尿酸値が高目の参加者には、ストレス解消を受け合いました。そのうち世界の痛風医学会が大騒ぎになるはずです。



 演題174番は、「危惧されているインスタントコーヒーの香りに発癌性はない」ことを示したもので、アメリカとヨーロッパのデータに加えて、新たに日本のインスタントコーヒーを測定して「食の安全情報」を提供しました。米国FDAが医薬品にしたことも手伝って、香りの成分5−HMFが、血液凝固を抑制する栄養成分として第一歩を踏み出したのです。持参した論文別刷りはあっという間に売り切れてしまいました。珈琲一杯の薬理学もこれぐらい売れればいいのになあ・・・とつい慾が出てしまいます。


 ポスター展示の周囲には、医療機器と医薬品関係のブースが立ち並び、医学・薬学関係の書籍が割引販売されていました。我が医薬経済社からはコーヒー3点セットが展示されていて、人垣をかき分けながら、頑張っている女性社員さんの写真を撮るのが精一杯でした。



 ということで、次回の学会出張は12月1日、京都、日本臨床薬理学会になりそうです。もう1回、尿酸を話そうかしら・・・。


(第56話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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