シリーズ『くすりになったコーヒー』


 NHK番組「異所性脂肪」への反響が止みません。事の起こりはと言いますと、


●太っていてもメタボにならない人がいる。


●痩せていてもインスリン耐性で、糖尿病になる人がいる(隠れメタボ)。


 それでも厚労省はメタボ基準を決めました。男のウェスト85センチ、女なら80センチ・・・そんな人たくさん居るのに、随分大雑把な基準です。NHKは「太っていても怖くない」などと放映して、厚労省とやり合おうと言うのでしょうか・・・?


 以前から「メタボ基準はおかしい」という専門家は大勢いました。なかでも新潟の小田栄司医師の論文はネットで読めますし、読んでみたら「メタボ基準の歴史」がよくわかりました(詳しくは →こちら )。


 身体に溜まる脂肪を分類すると、


【第1の脂肪】皮下脂肪・・・女性に多い


【第2の脂肪】内臓脂肪・・・俗に言う悪玉脂肪で、腹部内臓の外側にへばりつく


【第3の脂肪】異所性脂肪・・肝臓、膵臓、心臓、筋肉(霜降り)の内側に溜まる(図を参照)



 NHKは、第3の脂肪「異所性脂肪」さえなければ大丈夫と言いきって、太ったメタボ人間をホッとさせ、逆に痩せた心当たりのある人を脅しました。なかには「がっかりした」という感想も聞こえてきました。


●「油を食べずに一万歩以上も歩くなんて、これまでと何も変らないですよ」


 番組が古めかしい解決策しか提案しなかったことへの、視聴者の不満があるようです。


 さて筆者は異所性脂肪を研究していませんが、大いに興味があったので、調べてみました。折角ですから「番外編」と題して報告します。


●聖書に「目には目を」とあるように、「油には油を」が正解です。


 オメガ3脂肪酸をご存知ですか?青魚の油に多いEPAとDHA・・・植物系なら必須脂肪酸のアルファリノレン酸(ALA)が重要です。ALAを食べると、体内でEPAとDHAに変わります。


 2009年、チェコ科学アカデミーのコペッキー博士らは、青魚のオメガ3脂肪酸を食べると「脂肪が分解する方向に代謝スイッチが入る」ことを観察し、特に「異所性脂肪が減る」と発表しました。コペッキー博士の研究が優れているのは、異所性脂肪を意識して調べたことです(詳しくは →こちら )。


☆☆☆異所性脂肪を減らしたい、持ちたくないという人は、青魚を食べましょう。


 本マグロの大トロよりも、サバやコハダを食べましょう。イワシは目刺し、アジならたたきか開きでしょう。いくら食べても財布に迷惑はかかりません。


 さて問題は植物系です。オメガ3のALAは必須脂肪酸ですから、食べないと病気になりますが、食べればEPAもDHAもできてきます。ただし、台所でお馴染みのダイズ油や胡麻油には少ししか入っていません。


ALAの多い順に並べてみると、


1.チアシードオイル   64%
2.キウイフルーツオイル 62%
3.エゴマオイル     58%
4.亜麻仁油       55%
5.コケモモオイル    49%
6.その他の植物油    ずっと少ない


 残念ながら、どれも値段が高めです。そこで結論は、


☆☆☆青魚の魚油に勝るものなし。丸ごと食べればメタボなんか怖くない。


 そして食後には、コーヒー一杯をお忘れなく。


☆☆☆コーヒーは脂肪肝(異所性脂肪の代表)を防ぎます(詳しくは →こちら )。


【要注意】油の吸収を抑えるというトクホ飲料は、オメガ3も吸収しなくなるので不合格。これはトクホと言うより「下剤」です。


(第55話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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