シリーズ『くすりになったコーヒー』


 缶コーヒーを飲んだことのある人なら、レギュラーとは違う独特の風味をご存じだと思います。えっ? レギュラー飲んだことないんですって?


●缶コーヒーには、レギュラーやインスタントにはない独特の風味がある。


 コーヒー党のなかには缶コーヒーしか飲まない人がいます。そんなことはないという人でも、働き盛りなら缶コーヒーしか飲まない人はたくさんいます。阪神タイガースの兄貴は1日10本の缶コーヒーを飲んでいるんだそうです。凄いですね!


 缶コーヒーやボトルコーヒーと並んで、持ち歩き可能なボトル茶も人気です。香りという点で比較すれば、圧倒的にコーヒーの勝ちなのに・・・。


●缶コーヒーは香りも強いが、中身も濃い。


 そうなんです。分析装置を使って中身の濃さを比べてみますと、コーヒーにはレギュラーと同じ濃さの中身が入っていますが、緑茶ボトルの中身は圧倒的に水分だけで、水以外のものを見つけるには、分析装置があっても一苦労です。


●缶コーヒーは中身も濃いが、香りも濃い。


 缶コーヒーをNMRという装置で測ってみたら意外なことに気がつきました。レギュラーコーヒーには入っていない味と香りの成分があるのです。どの位あるかと言いますと、カフェインやクロロゲン酸といったコーヒーの主成分よりも多いのです。ですから、缶コーヒーの主成分はカフェインでも何でもなくて、缶コーヒーだけに独特の風味成分でした。


☆☆☆缶コーヒーの風味の素は、アルコールなのだ。


 そうなんです。缶コーヒーにはアルコール分が入っているのです。これを知ったとき最初に思ったことは、「どんな焙煎すればアルコールができるんだろう?」。疑問はすぐに解けました。メーカーは2種類のアルコールを見事に使い分けているのです。


●缶コーヒーのアルコールとは?


1.エタノール・・・・・・アルコール飲料に大量に含まれているアルコール
 

2.イソプロパノール・・・消毒・清掃用に使われるアルコール


 どちらのアルコールも、いわゆるアルコール臭が香ります。健康ドリンク剤やかぜ薬ドリンク剤にも数%のアルコールが入っていますが、この場合はまず例外なく飲用エタノールに限定されています。


 缶コーヒーにはどんな目的でアルコール分が、しかも2種類も入っているのでしょうか? その答えは簡単で、「美味しくするため」です。


●電車の車内広告で毎日見かける缶コーヒーのよくある広告


 厳選
 深煎り
 荒挽き
 炭焼き
 直火
 ・・・


どの味であろうとも、2つのアルコールの組み合わせは変わりません。


●コーヒーとアルコールの相性は抜群


 昔からレギュラーコーヒーにアルコールを入れて飲む習慣がありました。


 ブランディー
 ウオッカ
 ウイスキー
 その他


 缶コーヒーには、工業用アルコールではなく、税金のかからない程度のブランディーを入れて欲しいと思いました。そんな缶コーヒー、まだ飲んだことも見たこともありませんから。


(第52話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による    
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