シリーズ『くすりになったコーヒー』
カラメルを焼いたことがありますか? 砂糖を焼いたあの香りが5−HMFの香りです。もちろん他の匂いも混ざっていますが、おおむね5−HMFの香りです。糖類を含んだ食材なら、どれを焼いても5−HMFができるのです。
●5−HMFは匂うだけではない・・・血液がサラサラになる。
こんなことが日本の某大手製薬会社の特許申請書に書いてありました(詳しくは →こちら )。
残念なことに、5−HMFをくすりにしたのは米国とナイジェリアで、鎌形赤血球貧血の治療薬になりました(第1話を参照)。日本でくすりにしないのは、そういう患者がほとんど居ないからでしょうか? それとも、コーヒーやプルーンにたくさん入っているからでしょうか? いやいやカラメルを食べていればいいからかも知れません。
●5−HMF含有量世界一は、和歌山県の梅肉エキス、世界二はインスタントコーヒー
1粒何千円もするという高価な南高梅の果汁を、真黒になるまで煮詰めたのが南高梅肉エキス。あまり宣伝されてはいませんが、含有量から予測すると、その血液サラサラ効果は確かなものと思われます(詳しくは →こちら )。
5−HMFを食べると(または飲むと)どうして血液がサラサラになるのでしょうか? 特許申請書によれば赤血球のネバネバがなくなって流動性が高まるからだそうです。でもそれだけではなさそうです。
鎌形赤血球貧血の患者の場合、5−HMFを飲むと鎌の形をしていた赤血球が見る間に丸くなるのです。それだけではなく、運べなかった酸素を運ぶようになって、貧血が治ってしまいます。
●鎌形赤血球貧血の患者が5−HMFをのむ → 吸収される → 赤血球のなかに入る → 赤血球が丸くなる。
では、健康な人が5−HMFを飲むとどうなるでしょうか? 実験してみると確かに変わりました。なんと最初に変わったのは5−HMFそのものでした。
●健康な人が5−HMFを飲む → 吸収される → 肝臓へ行く → 代謝される → 5−HMFAになる。
こうしてできた5−HMFAは、ニコチン酸受容体にくっつきました。だからニコチン酸と同じ作用を出すのです(第2話を参照)。なかでも優れた特徴は、次のようなものでした。
●5−HMFAは、血小板が凝集するのを防いで、血が固まらないようにしています。
これまでの特許では、5−HMFのサラサラ効果は赤血球の柔らかさで説明されてきました。しかし、それだけではありませんでした。5−HMFは体内で5−HMFAに変化して、血小板に作用したのです。その作用はニコチン酸より強く、アスピリンに似ていました。
昔から、食後に見られる血液サラサラ度の変化は有名な話です。ビタミンKやら色々あって話は非常に複雑ですが、少なくともサラサラになる理由の1つは、熱で調理したときにできてくる5−HMFの働きです。
●焙煎コーヒーの5−HMFは、中煎りコーヒーとインスタントコーヒーに多い。
コーヒーの香りのご利益を得るには、深煎りと中煎りのブレンドが一番効果的だと思われます(詳しくは → コーヒーの処方箋)。
(第51話 完)