シリーズ『くすりになったコーヒー』
コーヒー豆に熱をかけて、黒光りするまで焙煎していると、豆の表面にコーヒーオイルが染みだしてきます。このオイルが美味しいと言って、プランジャーで淹れたり、エスプレッソにして飲んでいると、コレステロール値が高まって心臓死するリスクが増してしまいます。前世紀の終わり頃、そんな現象に気づいたフィンランドでは、煮出しコーヒーを止めてペーパードリップで淹れるようになりました。そうしたらコーヒーによる心臓死リスクは、他の国と同じようになったのです。
原因が化学的に解明されました。コーヒーオイル(図1の上)に溶けている2つのジテルペン・パルミチン酸エステルは、オイルにしか解けない成分です。ですからオイルを飲まなければ、体内に入ることはありません。もしオイルを飲めば、小腸に達して、膵リパーゼで加水分解され、カフェストールとカーウェオールに変わって吸収されます。そして1ヶ月すると、高コレステロール血症となり、何年かを経て心筋梗塞を起こすのです。
●新たに見つかった8種のカファロライドは上記のジテルペンの仲間だ(詳しくは → こちら)。
図2をご覧ください。仲間とはいえ、よく見ると少し違っています。中央の3つの6角形は同じですが、左下の5角形はちょっと違います。右上に歪んで描かれている5角形は同じです。では置換基を見てみますと、右上の長鎖脂肪酸はパルミチン酸だけでしたが、新化合物の脂肪酸はパルミチン酸以外にも色々あります。ただし共通して言えることは、どれもみなオイルに溶けて水には溶けないということです。ということで、物理化学的に分類すれば、新化合物もカフェオール、カーウェオールと同じジテルペンの仲間なのです。
ジテルペンはドリップで淹れれば飲まずに済みます。しかし焙煎豆のオイルにはアロマの成分が溶け込んでいますから、香りも味も良くなっているのです。そのため味に拘るコーヒー通の中には、カップの表面にぎらぎらオイルが浮いているようでなければ駄目という人もいるのです。
●新発見のジテルペンには血液を固まらせる作用がある。
これは拙い…コレステロール値が高まって、その上血小板が敏感になったら、動脈硬化は時間の問題。コーヒーオイルを避ける理由が、益々強まったということです。
●コーヒーはドリップして飲むに限る!
日本ネルドリップ珈琲普及協会は、美味しくて健康に良いコーヒーの提供に努めています(詳しくは → こちら)。
(第360話 完)
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