シリーズ『くすりになったコーヒー』


●コーヒーは、子供に良いか悪いか?


 副作用がないくすりだと思えば、コーヒーが好きな子供にコーヒーを飲ませることは決して悪いことではありません。


「コーヒーは子供に悪い」という理由を尋ねてみると、


・夜寝なくなる
・寝小便をする
・落ち着かなくなる
・興奮する
・コーヒーは大人の飲みものである
・その他色々


 これに対して、「コーヒーは子供に良い」という意見はほとんど聞きません。お医者さんに聞いても同じです。


●「コーヒーは子供に悪い」は正しいか?


【検証1】コーヒーが初めてイスラム社会と出会ったとき、権威の高いお寺だけの秘薬でした(詳しくは → こちら )。


 普通の人、ましてや子供が飲むなんてもってのほかでした。


 エチオピアの山奥からメッカの街に運ばれて、初めて文明と出会ったコーヒーは大人気。時の政府は、民衆がたむろして政治経済の話を盛り上げるのは危険であると考えて、「コーヒーは身体に悪いから」を理由に、コーヒー禁止令を出したのです。


【検証2】コーヒーが初めてイギリスに渡ったとき、女人禁制の喫茶店が大繁盛。コーヒーの値は高く、紳士の飲み物であり、婦女子が飲むなど考えられませんでした。


【検証3】ドイツでも、ビールが売れなくなるとの理由を隠蔽しつつ、身体に悪いからという理由で、コーヒー禁止令が発布されました。


 他にも似たような話がいっぱいあって、歴史のなかのコーヒーはいつの時代にも「身体に良い悪い?」の議論の的になったのです。今でも議論は続いています。詳しく知りたければ「珈琲一杯の薬理学」が為になりますよ。


「夜寝なくなる」とか「寝小便をする」などは、飲ませ方が悪いからで、大人だって寝る前に飲めば同じです。「落ち着かなくなる」とか「興奮する」は、飲ませたくないためにオーバーに言っただけで、言い換えれば「暗算が早くなる」とか「100メートルの自己新記録が出る」と同じです。


☆☆☆「身体に良いコーヒー」のイメージは、これから創られてゆくでしょう。


 さて、子供がコーヒーを飲むときに、その量についてはどうでしょうか? 子供と大人のカフェイン代謝率には大きな差はないといえるので、「子供のくすりの飲み方」を応用すれば、答えは簡単に出てきます(詳しくは →こちら )。


□1□ 2歳を過ぎた子供では、年齢に合わせて飲んだカフェインを、大人と同じか、むしろ少し早く排泄できる。


□2□ 子供のカフェインの安全性について、臨床試験では一応安全と報告されている。


□3□ 大人でもそうであるように、なかにはカフェインに敏感な子供もいるはずなので、最初は少ない量のコーヒーを飲めばよい。


 お母さんと一緒に喫茶店に行ったとき、いくら子供だってジュースとジャストウオーターではやんなっちゃいます!


(第46話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
『コーヒーを科学するシリーズ』を購入される方は下部のバナーからどうぞ