シリーズ『くすりになったコーヒー』


 いくつも薬を飲んでいる人は、薬の相互作用が出たらどうするか・・・ではなくて、始めから相互作用の出ない薬を飲むべきです。これは医師と薬剤師の務めですが、患者が医者に言わなかったばっかりに事故につながる例がたくさんあります。


 では、薬と食べものの相互作用はどうなっているでしょうか?


●「もうそんなものは食べないように!」・・・と言われてしまいます。


 ちょっと考えてみて下さい。本当にそれでいいのでしょうか?


 不景気な時代に「うつ病」になったら、薬を使えば早く治すことができます。もしあなたがコーヒー好きで、その気持ちが「うつ病」になっても変らないとしたら、次のような医者の指示を許せますか?


●医 者 「フルボキサミンを処方したので、コーヒーを飲んではいけません」


○あなた 「毎日コーヒーを飲むことだけが楽しみなんです・・・」


●医 者 「そんなことじゃあ病気は治らないですよ!止めなきゃあねえ!」


○あなた 「・・・・・」


 そしてあなたはたった一つの楽しみを取り上げられて、たとえ薬が効いたとしても暗い気持ちになってしまいます。そんなことでいいのでしょうか? あなたが医者に言うべきことは、


○あなた 「コーヒーを止めなくてもすむ薬はないのですか?」


●医 者 「それじゃあ別の薬を処方しておきましょう」


 一体なんなんでしょうか!?


 医者は、食べものと薬の相互作用のことを知っていても、初めての患者の好みのことなど知りません。加えて病院は混んでいるので、余計なことを省く傾向があるのです。本当は大事なことでも、見逃すことだってあります。


 もしあなたが自分の好みを黙っていたら、医者はあなたに起こるであろう「フルボキサミンとカフェインの相互作用」に気づいてくれません。あなたのちょっとした質問の有無が運命を変えてしまうのです。


 「フルボキサミンとカフェインの相互作用」は有名ですから、医者があなたに「コーヒーを飲まないように」と言わなかったとしても、薬剤師が念を押してくれるかも知れません。でもその場合は、


■薬剤師 「もしコーヒーを飲んで気分が悪くなったりしたら、お医者さんに言ってください」


 つまりあなたは行かなくても済むはずの病院へもう一度行く羽目になるのです。そして、今度は「コーヒーを飲むな」と言われるか、「薬を変える」ことになるのです。後者の場合、余ったフルボキサミンのお金が戻ってくることはありません。


 今風の慢性疾患の治療では、「好きなものが食べられない」ということはQOL(生活の質)の低下を招きます。「病気だから我慢しよう」ではなくて、「病気だからせめて好きなものを食べたい・・・」が叶ってこそ、慢性病と仲良く暮らすことができるというわけです。


(第44話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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