シリーズ『くすりになったコーヒー』


 前回書いたように、飲んだカフェインが血のなかの尿酸と一緒に働くと、優れた抗炎症作用を表わします。でもそれだけではないのです。


●コーヒーかお茶を飲めば、カフェインとポリフェノールが同時に働く。


 世の中には数えきれないほどの食材がありますが、カフェインとポリフェノールを同時に含む食材は「お茶とコーヒー」以外にありません。人々はその不思議な魅力に誘われて、美味しいお茶とこくの深いコーヒーを求め続けています。


 その不思議な魅力とは何でしょうか?


 まず、カフェインは医薬品の指定を受けているので、その品質は保証済みです。一方、ポリフェノールはと言いますと、今のところ「植物成分の一種」でしかないのです。しかもお茶とコーヒーのポリフェノールは別物ですし、他にも数えきれないほど多くのポリフェノールがありますから、品質保証などできません。


 お茶とコーヒーの魅力とは、品質保証が必要な単なる薬ではなく、もっと別のところにあるのです。


● 疲れたときに飲むとホッとする。


● またやる気が湧いてくる。


● 気分が安らぐ。


● 不思議な力で想像力が豊かになる。


● ある面、薬より良く効く。


 コーヒーとお茶には、くすりを超える上質な何かが想像できます。ここで、薬(medicine)という言葉を、辞書で引いてみましょう。その意味とは、


□ 医薬品


□ 病気や傷をなおすために飲んだり、ぬったり、注射するもの


□ 心身に有益なもの、または有益なこと


□ 不思議な力のあるもの、魔力のあるもの、超自然力、おまじない、魔法


□ ためになる経験、役に立つこと


 辞書に書いてあるこれらの意味から、「医薬品」を外して見ると、お茶とコーヒーは「薬を超えるもの」に間違いない・・・というよりも、薬とは本来そういう不思議なものなのです。一体、何が効いているのでしょうか?


☆☆☆コーヒーとお茶に共通の成分は、カフェインとポリフェノール


 この2つこそ、薬理学で言う「相乗効果」の本体です。この2つだけではないかもしれませんが、この他に何かがあるとしても、それは大して役に立ちません。何故なら、たった一杯のコーヒーを飲んで、身体の中に広がったとき、2つの成分が出会う機会はありますが、3つの成分が同時に出会う確率はほとんどないと言えるからです。薬理学とは数学でもあるのです。


 2つが出会う確率は、飲んだ量に比例します。薄いコーヒーをちょっとだけでは出会いのチャンスは生まれません。少なくとも1日に2・3杯は必要です。そして2つが出会ったときに何が起こるかといいますと、


●ポリフェノールが、食べたものからできる活性酸素の量を減らす。


●カフェインが、活性酸素の炎症を抑える。


この2つが同時に起こること、それが相乗効果となって、癌を含めた炎症性疾患を予防してくれるのです。


 最後に、カフェインはお茶よりコーヒーに多い。ポリフェノールは浅く煎ったコーヒーに多い。お茶とコーヒーと両方飲めば一番いい。食事の最中からコーヒーを飲めば、微妙な味の変化も楽しめる詳しくは → こちら )。



(第43話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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