シリーズ『くすりになったコーヒー』
第41話 カフェイン(その5) 禁煙支援します
カフェイン中毒という現象が起こることがあります。ヒトの例は稀ですが、動物では必ずと言ってよいほど起こります。ですから、中央競馬でカフェインはドーピングの対象になっているのです(詳しくは → 『カフェイン もうドーピングなどとはいわせない』)。
ヒトの場合にも、アテネオリンピックまでカフェインは禁止でした。しかし、麻薬や覚せい剤に比べるとカフェインの毒性と習慣性はずっと弱いこと、タバコのニコチンに比べても弱いことが確認されたので、ドーピングから外されたのです。だからと言って、北京オリンピックの選手たちがレース前にカフェインを飲んだかどうか、当局の発表はないようです。次のロンドンでは選手村の喫茶店は大繁盛になるでしょう。
日本では、新政権になってタバコ税値上げが話題です。タバコを吸わない人は大賛成ですし、喫煙者のなかにも諦めムードの人が多いようです。「この際止める」と言う人もいますが、どっこいそうは簡単でありません。ニコチン中毒は習慣性が強いので、止めようと思っても身体がついてこないのです。
でも最近は、「家にいる間は吸わない」というサラリーマンが増えました。家では子供に嫌われるからだと思われます。肩身の狭い思いが過ぎると、外出が待ちどおしくなったりするらしいです。寝ている間は吸いませんから、結局半日程度は禁煙に成功しているのです。
そういう人たちにとって、「いざ禁煙」の難しさは減っているはずです。だからタバコ税が上がって努力して完全禁煙に成功したら、家族の応援に感謝するべきでしょう。そういう人たちにとって、もう1つ良い話があります。
【禁煙を支援するコーヒーの勧め】
不思議なことに、ニコチンだけではニコチン中毒になりません。タバコの煙にはニコチン作用を強化する別の物質が入っています。コーヒーにもこれと同じ物質があって、コーヒーを飲むと1本のタバコの効き目が長続きして、次を吸わずにすむのです。
今時の喫茶店には禁煙席が多いので、ただの茶店と言うべきでしょう。本来の喫茶店では、タバコをプカプカ吸いながら、コーヒーをガブガブ飲む人を見かけました。そういう人の脳内にはニコチンが普通以上に溜まっています。さぞかし身体には悪いことでしょう。
この現象を逆手にとって、「タバコを吸う代わりにコーヒーを飲む」のです。すると丁度ニコチンガム(例えば → こちら)を噛んだり、ニコチンパッチ(例えば → こちら)を貼ったのと同じ効果が出るのです。これにカフェインが相乗効果をもたらします。でもこれは複雑な薬理学の話ですから、薬理学を知らない人は深く考えない方が利口です。
小学3年生に禁煙授業をしたときのことでした。
●「タバコを我慢してニコチンパッチを貼れば禁煙できる」
と話したら、すごい質問が飛んできました。
●「うちのお父さんはニコチンパッチを使ってますが、いつも1枚しか貼ってません。どうして中毒で何枚も貼ったりしないんですか?」
薬学部の学生でも絶対しない質問でした。小学生の直観には凄味があります。その場は何とかなりましたが、後になって、製薬会社の人に聞いてみたくなりました。でも未だチャンスがありません。
最後に今日の一言
☆☆☆禁煙努力中にタバコを吸いたくなったら、コーヒーを飲んで我慢しよう。
(第41話 完)