シリーズ『くすりになったコーヒー』


 現代人にとって、カルシウムは最も不足しがちな栄養素の1つです(詳しくは → こちら)。不足すると「足がつる」・・・これが典型的症状です。


●カルシウム不足は、年配者の生活習慣病の原因になります(詳しくは → こちら )。


 血液検査で、カルシウム血中濃度が増えると、危険です。カルシウム・パラドックスとは、


●「カルシウムが不足している人ほど、カルシウムの血中と臓器中の濃度が高い」


 これは実に不思議な話です。普通なら、身体に必要なものが減ってくれば、身体全体から減るはずです。なのに、カルシウム・パラドックスでは、「不足すると増える」というのです。腎臓に溜まったカルシウムが多すぎて、腎結石ができることすらあるのです。どうしてでしょうか? 疑問が解けたのは、つい最近のことです。


●不足したカルシウムを補うため、骨を溶かすホルモン(副甲状腺ホルモン)が出て、必要以上に骨を溶かしてしまう。


 つまり、骨粗鬆症になるのですが、骨が減っても、身体のあちこちに過剰なカルシウムの影響が出てきます。調子が悪いのは「メタボのせいだからダイエットしなさい」などと言ってる場合ではないのです。


 ということで、その人のカルシウム状態によって、お茶もコーヒーも「諸刃の剣」。


●カルシウムが足りている健康な人 → カフェインは安心して飲める病気予防の栄養素


●カルシウムが不足してパラドックスな人 → カフェインの摂り過ぎに注意


 今日は、「カルシウムが足りている健康な人」について、カフェインの更なる健康効果を書くことにします。


□1□ 筋肉では・・・


●カフェインを飲むと、筋肉の収縮力が増す(筋力増強)。


●カフェインを飲むと、心臓の拍出量が増す(強心作用)。


 これらが正しいことは、「アテネオリンピック(2004年)まで、カフェインはドーピング対象だった」という事実からも明らかです。カフェインは骨格筋や心臓の筋肉にカルシュウムを補って、スポーツ能力を高めます。だから、競技の前に飲むことは反則でした。それなのに何故ドーピングから外れたのかと言いますと、麻薬や覚せい剤に比べて、薬物依存や乱用リスクがないことが解ったからです。


□2□ 神経では


●一過性に、運動や学習に必要な刺激の伝達速度が速くなる。


●長期的に、加齢にともなう脳神経の死を遅らせて、認知力の低下を防ぐ。


 一杯のコーヒーでやる気が起こるのは、一過性のカフェイン効果です。一方、毎日コーヒーを飲んでいると、パーキンソン病やアルツハイマー病のリスクが減るとの調査結果が出ています。アルツハイマー・ネズミの実験では、コーヒーやカフェインが認知力を改善するというデータも増えてきました。


□3□ 免疫系では


●カフェインは、免疫細胞の死を防いで、免疫力を高めます。


●カフェインは、癌細胞のような増殖性細胞が増えるのを防ぎます。


 カフェインが癌に効果を発揮するには、大量投与が必要です。そのため、今は未だ臨床試験の段階ですが、骨肉腫で良い成績が上がっています(詳しくは → こちら)。
一方、日常の免疫力の向上には、お茶やコーヒーを毎日飲むことが大事なようです。ただし、カフェインの免疫効果は筋肉や神経効果ほど明確なものではなさそうです。


 以上は、「カルシウムが足りていれば・・・」の話です。次回は、カルシウム不足の人について、続きを書くことに致します。


(第38話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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