シリーズ『くすりになったコーヒー』


 カフェインが入っているお茶とコーヒーは、「薬食同源」の王様と女王様みたいな存在です。


●お茶の原産地は、中国南部の雲南省


●コーヒーの原産地は、エチオピアの高原


●今では、お茶もコーヒーも世界各地の農園で栽培されています。


 コーヒーは、世界中どこへ行ってもコーヒーですが、お茶はアジア以外では紅茶が主流。「薬食同源」の基本の1つは、「何時でも何処でも手に入る」ことであり、お茶もコーヒーもこの基本を満たすようになりました(→ こちらも参照 )。


 ところで「薬食同源」と言うからには、何か薬になるものが入っているはずです。そのとうり! カフェインこそが、お茶とコーヒーに共通の薬です。焙煎したコーヒー豆と茶葉を比べてみると、キリマンジェロと玉露なら、一杯あたりの含量はほぼ同じ。不思議な偶然ではありますが、知らず知らずに出来上がった生活の知恵と言うほかありません。


●コーヒー一杯は、豆10グラム・・・カフェインにして100ミリグラム


●玉露のお茶一杯は、茶葉3グラム・・・カフェインにして100ミリグラム


 コーヒーのカフェインは安いものほど増える傾向にありますが、お茶の場合は高級玉露が最高で、値が下がるとカフェイン含量も下がります。


 さて、コーヒーとお茶の「薬食同源」の本当の理由は、カフェインだけではありません。ここから話がちょっと難しくなりますよ 。


●コーヒーとお茶には、カフェインと一緒にポリフェノールが入っている。


●コーヒーとお茶のポリフェノールは、どちらも体内でメチル化されてから効く。


 如何ですか? こんな食べ物は他に例がありません。この2点を備えていれば、「活性酸素を作らない!増やさない!」という、慢性疾患予防のインパクトが高まるのです。昨年と今年に発表された4つの論文を使って、「薬食同源」の謎解きにLet’s try!


□1□ 体内に侵入した抗原は、腫瘍壊死因子TNF(ティーエヌエフ)を増やして、それがNADPH酸化酵素を刺激して、活性酸素を作り出す(詳しくは → こちら )。


□2□ このときカフェインは、TNFの余分な増加を防ぐ(詳しくは → こちら )。


□3□ ポリフェノールはメチル化されて、NADPH酸化酵素を不活化する(詳しくは → こちら )。


□4□ 結果として、コーヒーかお茶を飲んでいれば活性酸素が増えずにすむ(詳しくは → こちら )。


 この複雑な関係を1枚の絵にすると、「薬食同源」の原理が見えてくるのですが・・・意味不明という方のため・・・要点だけを言えば、カフェインとポリフェノールの共同作業が重要で、つまりはカフェインとポリフェノールを一緒に飲む人だけに、確かな効果が出るのです。


【知って得する豆知識】お茶は値が高いほどよく効くが、コーヒーは安いものほど効き目が強い。だから最大効果を得るためには、安いコーヒーを美味しく淹れるに限ります。そうなればコーヒーこそ「薬食同源の王様」です。


(第36話 完)



栄養成分研究家 岡希太郎による
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