シリーズ『くすりになったコーヒー』


 5月の緊急速報(第21話)に、「コーヒーでうがい」すれば、新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)の予防に役立つと書きました。今日の速報は、欧州薬学雑誌(→ こちら )。最新版。マウスの実験ですが、


●カフェインとコレステロール低下薬(スタチン)を一緒に飲むと、タミフルと同じ程度に効く。


 この実験には、米国キャノパスバイオファーマ社(→ こちら)が開発中の鳥インフルエンザ(H5N1)薬、スタットC(スタチン+カフェイン)が使われました。実験に使われた薬の量を、ヒトに置き換えてみますと、


□カフェイン  500ミリグラム/日


□ロバスタチン 125ミリグラム/日


 ロバスタチンはコレステロール低下薬(一般名スタチン類)の1つ。標準投与量は1日10ミリグラム程度。ですから、このマウス実験では10倍以上を使ったことになります。一方、カフェインの量は標準範囲内で問題ありません。

 さて、この実験の結論は、


■1■ 治療薬としては、タミフルと同程度であった。


■2■ 予防薬としては、タミフルより優れていた。


 ただし実際には、コレステロール低下薬をこんなに沢山飲むわけには行きません。お医者さんだってそんな処方箋は書いてくれません。現状ではあり得ない話です。なんとかならないものでしょうか・・・。


 そこで、1985年の古い論文(詳しくは → こちら)をもう一度読んでみました。


●カフェイン水溶液をマウスに投与するだけで、マウスはH1N1ウイルスに感染しなくなる。


 効果は50%のマウスに表われました。ただし、一旦感染してからではほとんど効きません。なるほどそうなのか・・・と、これら2つの論文を合わせてみると、


●新型インフルエンザの予防には「カフェインだけでも効く」


 ということになるのですが、ヒトの場合はと言いますと、残念ながら厚労省のお墨付きがあるわけではありません。お墨付きを取ろうという製薬会社もありません。何故かと言えば、「カフェインだけじゃあ儲からない」というのが本音です。


 ところで皆さんは、どうやって新型フルーを予防しますか? 恐らくは・・・


●うがい・手洗い・マスク・人ごみを避ける・十分な睡眠と栄養・・・


 今日からはそれらに加えて、


□ 普段コーヒーを飲んでいる人は、1日1杯を追加する。


□ 普段コーヒーを飲まない人は、薬屋へ行って「日本薬局方無水カフェイン」について聞いてみるか、カフェイン入りドリンク剤を買って飲む。


□ 安いコーヒーでうがいする。


 遅くとも、ワクチンの順番を待っているうちにはじめましょう・・・備えあれば憂いなしですから。

【処方医の方へ】患者さんが望めばの話ですが、スタチン薬にカフェインを併用しては如何でしょうか? 用量は1回100mg程度、朝昼の2回が適当と思われます。


 参考までに、一般用医薬品にはカフェインを含むものが沢山あります(1回50mg程度):かぜ薬719品目中641品目;解熱鎮痛薬294品目中237品目;鎮咳去痰薬357品目中135品目;滋養強壮薬1613品目中698品目;催眠鎮静薬38品目中1品目;よい止め88品目中45品目(これには10mg程度);その他多数;ただし小児薬は0品目。スタチン薬をお茶やコーヒーで飲むのも一案です。カフェインで頭痛、悪心、動悸などの既往にはご注意ください。

【製薬会社の方へ】上記論文に、「カフェインの抗炎症作用が抗ウイルス薬の効果を高める」と書かれています。「抗ウイルス薬+カフェイン」合剤を考えください。ただし、タミフルの中枢作用への影響は未知数です(詳しくは → こちら)。


 カフェインの抗炎症作用については → こちら


(第34話 完)


栄養成分研究家 岡希太郎による
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