シリーズ『くすりになったコーヒー』
「諸刃の剣(もろはのつるぎ)」の使い方を間違えると、命とて落としかねません。
●薬は「諸刃の剣」なので、法律で厳しく規制します・・・厚労省。
こうして薬事法ができたのですが、どうにもならない難問が手つかずのままです。それは一体何かと言いますと、
●「薬って何?!」
まるで小学1年生の質問のようですが、実はこれが難問なのです。そこで、広辞苑を引いてみました。
●日本語で「薬」とは?
1.病気や傷を治療・予防するために服用または塗布・注射するもの
2.広く化学的作用をもつ物質
3.心身に滋養・利益を与えるもの
4.ちょっとした賄賂(わいろ)
5.ごく少量のたとえ
●では、英語で“medicine”とは?
1.薬、医薬品、薬剤、薬物
2.医学、内科学、医業
3.不思議な力のあるもの、魔力のあるもの、超自然力、おまじない、魔法
4.ためになる経験、役に立つこと
5.お酒
洋の東西を問わず「薬」とか“medicine”には、「病気を治す」以外に、実に曖昧で、思わせぶりで、つましくて、慾張りで、いい加減で・・・色んな意味があるのです。ですから、「薬」を法律で取り締まるなどということは、想像以上に難しいことなのです。例えば、
●「嘘の宣伝文句」は薬事法違反・・・
・・・なのですが、その薬事法といえども「偽薬」を認めています。どういうことかと言いますと、薬事法が規制する「臨床試験」では、「偽薬」を半ば義務化し、この「偽薬」をプラセボと呼んでいます。
そうなのです。製薬会社が社運をかけて見つけた新薬候補が、「偽薬」より少しでも効くということこそ、新薬のお墨付きを勝ち取る条件になっているのです。しかし、そこでまた新しい規則が加わります。
●安全でなければ薬事法違反・・・
・・・なのです。毒にも薬にもならないはずの「偽薬」より副作用が強ければ、お墨付きは得られません。そして要するに、「ちょっとだけ効いて安全な薬」だけが認められる・・・という変な結果になりかねません。
というわけですから、「諸刃の剣」を安全に使おうという薬事法の精神を、厳密に守れば守るほど、薬は安全ですが効かなくなってしまいます。そして遂に、「薬が効く遺伝子をもっている人が飲めば危なくなくなる薬」が認められるようになりました。そして、「そういう遺伝子を見分ける薬」にもお墨付きが授けられます。
●よく考えてみたいものです。「片刃でもよく切れる刀」はないものか?と。
さて、病気の予防にとって、コーヒーはものすごくよく効く飲み物です(詳しくは → こちら 珈琲一杯の薬理学)。しかもC型肝炎など、一部は厚労省お墨付きです(詳しくは → 天声人語 )。しかも、コーヒーが原因で亡くなった人など聞いたことがありません。このコーヒーのなかに、よく効いて安全な薬が入っているはずなのに、誰もそれに気づいていない・・・ということではないのでしょうか。
●病気を治す薬は「諸刃の剣」・・・そして、病気を予防する薬は「薬食同源」。
以前、知り合いのお医者さんから聞きました。
☆☆☆「病気を治す薬よりも、病気にならない薬を探すほうがずっと難しい」
どうやら薬食同源を極める必要がありそうです。
(第33話 完)