シリーズ『くすりになったコーヒー』


 「白ネズミが苦いコーヒーを飲むわけがない」と思っていませんか? でもそれだけではありません。


●「毎日コーヒーを飲んでいる白ネズミはボケません」


 水面下に避難台を1ヶ所だけ置いた小型プールに、アルツハイマーネズミを入れると溺れてしまいます。でもその前に、彼/彼女にカフェオイルキナ酸(クロロゲン酸ともいう)を毎日飲ませるか、浅く煎った美味しい(?)コーヒーを飲ませておけば、一度覚えた避難台の位置を忘れることはありません(詳しくは → こちら)。


 発見者の磯田先生(筑波大学)に質問してみました。すると答えは、


●「白ネズミはコーヒーが大好き」


 そう言えば、コーヒーが好きで毎日飲んでいる人も、アルツハイマー病になりにくいという調査結果がありました。カフェオイルキナ酸は人にも効くのでしょうか?


 7月26日の日経新聞・健康欄に、「認知症予防にコーヒー有効?」の大きな記事が載っています。教えてくれた西村書店と第一三共の社員の方、ありがとうございました。


 色々書いてありましたが、焦点が絞り切れません。第一私の知る限りでは、疫学調査で証明され、かつ認知症専門医も認める確かなアルツハイマー病予防法はコーヒーではありません。では、何が効くかと言いますと、


☆☆☆スポーツすること・・・これがダントツの一番。


☆☆抗炎症薬か、コレステロール低下薬のどちらかを飲んでいる人・・・これが二番。


 逆にリスク要因は?と言いますと、


★★★血中コレステロール値が高い人(太っていなくてもリスクになります)


 今度は白ネズミではなく白ウサギをコレステロールで育てると、脳の血管が弱まって、そこからTNFαという炎症物質が脳に入り、脳神経を傷つけます。こういうウサギでも毎日コーヒー(またはカフェイン)を飲んでいると、起こるはずの記憶障害が起こりません。カフェインが脳血管を守るからです。今のところ白ウサギの話です(詳しくは → こちら)が、人の場合には、エタネルセプト(エンブレル )というTNFα中和薬がアルツハイマー病の治療に試されています(詳しくは → こちら )。


 ここでとっておきのお話です。


●指先を器用に動かす人はボケない。


 指を正確に動かすには複雑な脳神経の働きが必要です。脳神経学者が言うことには、指を正確に動かす練習をすれば、脳神経は老化しない。ピアニストには確かにボケが少ないのです(詳しくは → こちら)。


 同じ指を使う職業でも、キーボード操作では効き目が出ません。単純作業だからでしょうか? 脳科学者・茂木健一郎氏によれば、


☆☆☆「クリエイティブに指を動かすことが大事」


 ということで、コーヒーに効きめがあるとしても、ピアニストの指やアスリートのエクササイズには敵わないようです。そこで、凡人にもできる多少なりともクリエイティブな指の運動をやってみましょう。


【実技編】(注:ピアニストとアスリートの方には無用です)


□第1の技□ 予備校生がよくやる鉛筆回しの難易度を高めて、新技を開発する(→ 解説 )。


□第2の技□ 俗に言う「指回し」: 両手の指先を全部合わせて、1指だけ離して、離した指が互いに触れないように、グルグル回す練習をする。(図参照:上手になったら、合わせる指をずらしてやればもっと効果的だよ!)。


□合わせ技□ コーヒーを飲んでから技の練習をすれば、クリエイティビティーが高まって、運動生理学と薬理学の相乗効果が期待できます。


(第30話 完)



栄養成分研究家 岡希太郎による
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