シリーズ『くすりになったコーヒー』


 世界共通の疫学データに、「コーヒーを飲む群の死亡リスクは低い」があります。寄与成分は解っていませんが、最近になって「カフェインではない」との論文が発表されました。


●カフェインは死亡リスクと無関係である(詳しくは → こちら)。


 どうやって証明したのでしょうか?答えは、「カフェイン代謝酵素の遺伝子があるかないか」の群別と、「飲んでいたコーヒーはカフェイン入りかデカフェコーヒーか」の群別がキーとなりました。


 英国バイオバンクに登録している920万人のなかから、妊婦を除いて、かつCYP1A2など4種のカフェイン代謝酵素の遺伝子型と、喫煙歴と毎日のコーヒー摂取歴が解っている498,134人を抽出しました。そして、カフェイン入りでもデカフェでも、1日に飲むコーヒー杯数で層別して、0杯、<1杯、1杯、2-3杯、4-5杯、6-7杯、>8杯の7群に分けて生存データを比較しました。結果を図に示します。


●カフェインを含む含まないとは無関係に、1日に飲むコーヒー杯数と死亡リスクは逆比例していた。




 まず図の表題にあるように、遺伝子変異は死亡リスクと無関係でした。次に、図の1日杯数と死亡リスクの関係は、カフェインを含んだレギュラーコーヒーを飲んでいても、カフェインのないデカフェタイプを飲んでいても、ほとんど同じだったのです。ということは、カフェインは死亡リスクとは関係ないということです。


 ここで、過去の複数の論文を思い出してみると、ちょっと気になることに気づきます。日本の国立がん研究センターの論文も含めて、コーヒー習慣と「全死亡リスク」のグラフは、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患など、死亡率が高い病気の「疾患別死亡リスク」のグラフと同じなのです。これを図中に赤い矢印で示します。つまり、コーヒーを5杯以上で飲み過ぎていると死亡リスクが高まるという、J字カーブになるのです。しかし残念なことに、今回の調査では、明確なJ字が見えません。そこで次のような疑問が残ってしまいます。


●1日5杯以上のコーヒーを飲む群で、死亡リスクが上昇するのは何故か?


 図の棒グラフではJ字カーブが不明確ですが、過去のメタ解析を尊重すれば赤い矢印のようになっています。そしてJ字になる理由として、「カフェインの摂り過ぎ」が指摘されていました。デカフェコーヒーの棒グラフが、5杯を過ぎても伸びなければ、確かにカフェインが原因であると思われますが、残念ながらグラフが明確でありません。


●「カフェインが全死亡リスクと無関係」と断言するには、デカフェコーヒーを飲み過ぎた時のデータが必要だ。


 今のところ言えることは、「1日5杯までのデカフェコーヒーは全死亡リスクを下げる」が、「カフェインは無関係」と言うためには、「5杯以上飲んでいる群の全死亡リスクの変化」を明らかにする必要があるのです。


(第358話 完)


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