シリーズ『くすりになったコーヒー』


 ごく稀な例だと思いますが、「コーヒーを飲んだか、それとも飲んでないか?」が問われる場合があるそうです。お気づきでしょうが、犯罪捜査の場合です。容疑者は無実のアリバイとして「その時刻には友達とコーヒーを飲んでいた」と言ったとしても、ほんとに飲んだかどうかは疑わしい・・・そんな時に血液検査を実施して、もし「シクロイソロイシルプロリル」が検出されれば、「確かにコーヒーを飲んでいた」となるのです(詳しくは → こちら)。


●血液や尿の検査でカフェインが出ても、コーヒーを飲んだとは限らない。


 これは誰もが知っていることです。お茶にもカフェインが入っていますし、風邪薬にも入っています。ですから、カフェインが見つかっても容疑者のアリバイは崩れません。つい最近まで、「トリゴネリンがマーカーになるのでは」との意見がありました。しかしその確率は90%程度で、残りの10%はコーヒー以外の起源なのです。たとえばカボチャを食べたとしてもトリゴネリンが検出されてしまいます。


●新たに見つかったマーカー物質は、「シクロイソロイシルプロリル」である(詳しくは → こちら)。




 この物質はコーヒーを飲んだ時だけに血液から検出できるほぼ絶対的なコーヒーマーカーなのです。正確に言えば正しい判定の確率は97%以上です。さらに、トリゴネリンと一緒に検出されれば、確率はほぼ100%になるはずです。


 さて、話はいささか飛びますが、生きているヒトの血液や尿の検体を使って、その中に含まれている有機化合物を網羅的に検出する「メタボロミクス」という新技術があります。集積されたデータは言うまでもなく医学、薬学、栄養学にとって貴重なものです。


 今、フランス国立農学研究所(INRA)の研究グループが、あらゆる食材を食べた後の検体を分析してメタボロミクス・データを収集しています(詳しくは → こちら)。勿論このなかにはコーヒーのデータも含まれています。


(第356話 完)


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