善玉コレステロールを増やしてくれる薬がたった1つだけあります。ビタミンB3の仲間のニコチン酸で、焙煎コーヒー成分の1つです。ビタミンですから重要栄養素でもあり、もし欠乏すればペラグラという病気になって死ぬことがあります。幕末の宗谷岬で津軽藩兵の命を救ったコーヒーの話は有名です。
http://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/section.main/suisan.kanko/point-tugaruhanpei.html
高脂血症はメタボリックシンドロームの症状の1つです。高くなった悪玉コレステロールを下げる薬はコレステロール低下薬で、製薬会社のドル箱商品になっています。しかし、この薬を飲んで悪玉コレステロールが下がっても、善玉まで一緒に下がっては元も子もありません。それがこの薬の欠点です。
世界一大きい製薬会社ファイザー社は、世界一売れているコレステロール低下薬の製造元として有名です。ファイザー社の薬はリピトールですが、その他にも5つの製薬会社が同じ作用の別々の薬を売っていて、どれもみなよく売れています。
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2189015F1023_1_17/
画面左下のファイル名をクリックすると詳しい情報を入手できます。
さて、コーヒーに含まれているニコチン酸はずっと安い薬ですが、何故かほとんど売れません。1日2〜3回程度にまとめて飲むと副作用が出るからです。そのため少しずつ数時間おきに分けて1日中飲んでいなければならず面倒くさいのです。
そこでファイザー社は考えました。腸のなかで1日かけてゆっくり溶けるようにしたニコチン酸(ナイアスパンhttp://www.niaspan.com/)を、リピトールと混ぜて売るアイディアです。そうすれば、「善玉が増えて悪玉が減る」という一石二鳥の効き目になるはずです。残念ながら日本ではナイアスパンを入手することができません。
では日本に住んでいるメタボ人はどうすればよいのでしょうか。コレステロール低下薬を飲んでいても善玉コレステロールが低い人に何かよい方法はないものでしょうか。実は私もその一人なのです。
そんな人にとっておきの話があります。ニコチン酸が入っている深煎りコーヒーを飲めばよいのです。とは言ってもニコチン酸の必要量を十分取るにはガブ飲みしないと間に合いそうにありません。1杯のコーヒーにはせいぜい5mgしか入っていないのに、善玉を増やすのに必要な1日量は100mgにもなるからです。
でもご安心ください。深く焙煎したコーヒーからはニコチン酸以外にニコチン酸とそっくりのメイラード酸を沢山とることができるのです。それらを全部総合すると、1日に最大5杯程度のコーヒーで間に合うようになるからです。
ついでに書いておきますと、国内ではニコチン酸サプリメントは入手できません。ドラッグストアで勧められたら気をつけましょう。同じビタミンB3のニコチン酸アミドを売りつけられてしまいます。さらに突っ込めば、「ナイアシンだから同じですよ」と説明されますが、納得してはいけません。何故ならビタミンとしての効き目は同じでも、メタボを癒す効果はニコチン酸だけにしかないからです。
食べ物にもちょっと注意が必要です。ビタミンB3を多く含んでいても動物系は役に立ちません。ペラグラならば1日1本の焼鳥レバーで間に合いますが、メタボの癒しにレバーは無力。その代わり私の場合はキノコを沢山食べています。安いエノキダケに一番沢山入っているとのことですから、何にでもエノキを入れて食べるのです。
http://www.hab.or.jp/paper/drug_info_12.pdf#search
さて最後に、ビタミンB3のニコチン酸は煙草のニコチンとはまったく違います。くれぐれも誤解のないように。
あ、そうそう、成人する皆さんおめでとう。
(第2話 完)
栄養成分研究家 岡希太郎による
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