シリーズ『くすりになったコーヒー』
コーヒーは先進国のメタボリックシンドローム、アルツハイマー病、肥満、痛風、慢性肝炎、その他20種類以上の病気の予防に効き目を発揮します。この第1話はコーヒーの原産地に想いを馳せて、黒人特有の貧血予防について紹介します。コーヒー発祥のアフリカの大地を思いながら、一杯の珈琲に秘められた天然の恵みを味わってみては如何でしょうか。
ナイジェリア国(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/africa.html)はアフリカ大陸の西海岸に位置し、貧困な上に内戦が絶えず、周辺国で盛んなコーヒー栽培も低調です。その上、人口の約1割にもなる1400万人が黒人特有の鎌形赤血球病の遺伝子をもっています。この人達は蚊が媒介するマラリアに罹りませんが、重い貧血で農作業すらままなりません。
鎌形赤血球病は日本の医学教科書にも書かれるくらい有名な病気ですが、これまでの薬にはどれもみな重い副作用がありました。ところが2007年春、コーヒー豆を焙煎するとできてくるHMFという化学成分が、鎌形赤血球病の貧血を予防する特効薬になりました。言うまでもないことですが、認可されたのはコーヒーではなく化学合成したもので、米国の食品医薬品局(FDA)は、米国内8万人の患者に資金援助することになりました。一方、ナイジェリア政府も先進国の支援を得ながら国内の普及を目指しています。
HMFの効き目を簡単に説明します。1回3グラムのHMFを飲みますと、病気のため鎌のように変形した赤血球のなかに入ってきます。すると、酸素を運べなかった鎌形の赤血球が丸みを取り戻し、酸素を運ぶように回復するのです。幸いなことに副作用はありません(英国血液学会誌128巻:552−61頁,2005年)。
以下は、この素晴らしい効き目の応用編です。公表されたヒト試験データから専門的に予測しますと、1日に約50ミリグラムのHMFを飲み続ければ、数週間で症状が軽くなるとの答がでてきます。もしこれをコーヒーで摂るとすると、1日どれだけ飲んだらよいでしょうか? インスタントコーヒーで3〜4杯に相当します。ただし銘柄によって含量が違うので、使うときは製造元に問い合わせが必要です。なかにはほとんど0の製品もあるからです。レギュラーコーヒーなら、中煎のミディアムかシティーが適しているでしょう。
さらなる応用編として、煎じた漢方薬にもHMFが含まれていますし、ごく普通の食材でも、圧力鍋で100度以上に熱すればHMFが増えてきて、血液さらさら効果を発揮します。(http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/patent/advanced/pat/detail_pat.cgi?patid=18358&detail_id=21675)(http://jstshingi.jp/abst/p/07/jst/10/1001.pdf)。
トースターで焼く食パンも両面キツネ色に焼き上げれば、1枚に10ミリグラム程度は含まれています。朝食をインスタントコーヒーとトーストで済ませたとしても、寒い日の冷え症や貧血などに確かな効き目を実感できるかも知れません。
さあ、明日からでも試してみては如何ですか?
(第1話 完)
栄養成分研究家 岡希太郎による
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