シリーズ『くすりになったコーヒー』
今週16日の晩、神奈川県厚木市の「厚木ライオンズクラブ」に招かれて「珈琲と健康」話してきました。クラブの方が撮ってくれた写真です。ライオンズクラブは各地にありますが、今回は3ヶ所目でした。
先ずは国旗に敬礼して国歌斉唱、ライオンの誓いを暗唱して、引き続き万国旗をあしらった演台で会長さん(大学の後輩で元厚木市議会議長の石射君)のご挨拶は、「学生時代には教わったことのない先生から初めて授業を受けることに・・・(笑)」でした。
さてこの日の演題は「珈琲と健康/不老長寿の原理に迫る/珈琲はミトコンドリアが大好き」。何とも長々しい演題ですが、米国で売られている長寿カプセル1つが8,000円と聞けば、この演題なんか可愛いものです。いずれこのカプセルのお値段がコンビニコーヒーと同じ1杯100円にまで値下がりするかもしれない・・・今日はそのさわりだけを紹介します。
前置きとして、どうしてもご理解いただいておきたいことがあります。それは細胞という生命体の不思議でかつ簡単な仕組みのことです。これさえ知っていれば長寿の仕組みの一端が自然に見えて来るのです。物語風に説明してみましょう。
●昔々あるところに細胞という生き物と、それよりずっと小さなミトコンドリアという生き物が住んでいました。
ここで大事なことは、細胞もミトコンドリアもとても弱弱しい生き物で、ちょっとした周囲の変化に耐えられないほどだったということです。ですから数も少なかったしお互いに出くわすことはほとんどなかったのです。それでも長い長い時間を経て、
●遂に細胞とミトコンドリアの出会いの日がやってきた。
すると驚いたことに、初めて出会った見ず知らずの相手だというのに、小さなミトコンドリアが自分より何百倍も大きな細胞の中にすんなりと潜り込んでしまったのです。原始の細胞には侵入者を殺す仕組みはまだなかったし、ミトコンドリアにも細胞を殺す武器は何もなかったことが幸いでした。そして両者は互いに助け合い、足りないものを補い合って不毛の土地で生き続けることに成功したのです。その相互扶助の関係とは、
●ミトコンドリアは栄養素(糖質と脂質)をエネルギーに変えることができるが、栄養素を自ら集めることはできなかった。
●片や細胞は栄養素を集めることはできたが、エネルギーに変える能力には欠けていた。
こうして細胞とミトコンドリアは、栄養素を集める役目とそれをエネルギーに変える役目を分担して、その役目をより効率的に果たすことができるように、更なる長い時間をかけて、現在のような姿に進化したのだとさ。
●ミトコンドリアは細胞の寄生体として、宿主が元気に長生きするようにエネルギーを作り、細胞はミトコンドリアが気持ちよくエネルギーを作ってくれるように環境を整備して、かつ栄養素を与え続ける。
読者諸氏は「パラサイト・イヴ」というホラー小説をご存知ですか?東北大薬学部の学生が授業で習った「ミトコンドリアと細胞の関係」を、もつれた男女関係に置き換えて書いたベストセラー小説です。それはさておき、筆者がライオンズクラブで披露した珠玉のスライドを1枚だけ紹介しましょう。このスライドはコーヒーが新薬にも勝ることを示すために、「コーヒー成分の細胞内作用点」を表わしています。
要旨だけまとめます
1.(赤)唯一のビタミン・ニコチン酸がミトコンドリアにNADを補給する。
2.(赤)NADは細胞核に働きかけて、長寿遺伝子Sirt1を発現し、染色体テロメアの短縮を防ぐ。
3.(赤)長寿遺伝子とテロメアは互いにクロストークしながら、細胞の不具合を修復するよう準備する。例えば「過剰な活性酸素を消去するタンパク質の遺伝子に発現準備を促す」。
4.(青)コーヒーのポリフェノールやカフェインその他が、指令に基づく修復の手助けをするために、それぞれの作用点に働きかける。
5.ミトコンドリアと細胞核が指令塔(赤)だとすれば、コーヒー成分は指令通りの修復が実行されるように細胞の各部署(青)に働きかける。
●図の赤と青の両方に作用する成分を同時に含む食品はコーヒーだけである。
【TV予告】
(第393話 完)
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