シリーズ『くすりになったコーヒー』


 俳優の加藤剛さんが胆嚢癌で亡くなられました。去る6月18日のことでしたが、昨年の5月1日、米国立癌研究所が編纂している癌専門の医学誌に「コーヒーを飲む人は胆嚢癌になるリスクが低い」との初の論文が発表されました。数値だけ見れば、コーヒーを飲まない人のリスクを1.00とするならば、コーヒーを1日4杯飲む人のリスクは0.41、つまり半分以下に下がるというのです(詳しくは → こちら)。


 コーヒーは肝臓の薬と言われるくらいに、コーヒーを飲んでいる人の肝臓病リスクは下がります。アルコール性肝炎、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、肝硬変、胆石、肝臓癌、そしてC型肝炎ウイルスによる発癌まで、どれもコーヒーの恩恵を受けています。恩恵がないのは胆道癌だけでしたが、そのなかで胆嚢癌の疫学データの発表が遅れていました。もっと早くに発表されていたら、コーヒーの恩恵を受けた人が増えていたかもしれません。


 図をご覧ください。加藤剛さんの写真とともに、コーヒーと胆嚢癌リスクの関係を示します。




 どうやら胆嚢癌とコーヒーの関係は、コーヒーを飲めば飲むほどリスクが下がると言えそうです。その傾向は肝臓がんの場合と同じで、肝臓癌のリスクは最大で25%まで低下するとのデータがあります。しかしその一方で、1日5杯以上のコーヒーは、心臓病と脳卒中のリスクを高め、1日10杯以上になると過半数の人でリスクが高まるとのデータがあります。ですから、コーヒーがいくら優れた肝臓の薬と言われても、飲み過ぎには気をつけなければ、「肝臓は丈夫だったのに脳出血でお亡くなりになりました」などとなってしまうのです。


 ついでに書いておきますが、民間で人気のある肝臓の薬「ウコン」も要注意です。ウコンには表に出てこない(論文として発表されない)肝障害のデータがあるからです。肝臓の専門医の多くが指摘する「知る人ぞ知るウコンの肝障害」なのです。「飲む前に飲む」などというCMを鵜呑みにして、毎日ウコンを飲んでいると、次の健康診断でAST、ALTの高値を指摘される運命になってしまいます。


●世のサラリーマン諸君へ告ぐ:飲む前に飲むのではなく「毎日コーヒーを飲みなさい」ですぞ!


(第354話 完)


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