シリーズ『くすりになったコーヒー』
コーヒーの人気が高まっています。最近の傾向として、以前ほど深く煎らないで、やや酸味を残した浅煎り系の人気が高まっています。健康志向の面からは、「浅煎りコーヒーに多いポリフェノーのクロロゲン酸」ということも人気の理由かもしれません。ポリフェノールの持つ抗酸化性が「美と若さのもと」になるとの健康食品会社のキャッチフレーズが効いているようです。
●クロロゲン酸(CGA)は焙煎するとなくなってしまう。
生豆のCGA含有量は飛び抜けて大きな数値です。ロブスタ種の豆なら10gに1g近くが入っています。アラビカ種でもその半分ぐらいは入っていますから、他の野菜などとは比べ物になりません。しかし、それほど多いCGAが深く焙煎するとなくなってしまいます。ですからCGAの健康効果にあやかるためには、出来るだけ浅煎りにしなければならないのです。しかしそこにはもう1つ厄介な現象が起こります。
●焙煎中にヒドロキシヒドロキノン(HHQ)ができる(詳しくは → こちら )。
かつて花王食品の研究によれば、焙煎中にCGAが減ってくると、逆にHHQが増えることが報告されました(図1)。しかもこのHHQは飲むとラジカル(活性酸素)を発生するので、CGAの抗酸化作用が打ち消されてしまうというのです(詳しくは → こちら )。
また別の研究によれば、HHQがCGAそのものの化学分解でできることもわかりました(詳しくは → こちら )。この論文に載っている焙煎中のCGAの化学変化を図2に引用しましょう。まずCGAが熱で3つに分解し、更に分解して小分子のポリフェノールに変わります。その中の1つにHHQがあるのです。このことから解ることは、図1のCGAとHHQの時間変化は完全に連動して起こっているということです。
以上をまとめると、体に良い浅煎り豆の作り方が見えてきます。
●浅煎り豆の抗酸化作用を最強にするには、生豆と同じ最大量のCGAを含みHHQを含まない焙煎をすればよい。
これを図に描いて見ましょう(図3)。
生豆を手網に入れて中火のガスバーナーにかざして加熱すると、暫くして薄黄色に色づいて、独特のナッツ臭が漂います。更に過熱を続けると、次第に濃く色づいて、豆がはじける「パチッ」という音が聞こえてきます。第1ハゼ音の始まりで、このときCGAはほとんど無傷で残っています。ここで加熱を止めることで、ポリフェノールたっぷりで、HHQがほとんどない超浅煎り豆の完成です。
●希太郎ブレンドの超浅煎り豆は生豆に近い量のCGAを含む超浅煎り豆である。
この豆の香りと味は生豆の種類によって違っています。ある時は蕎麦の味、またある時はピーナッツの香りという具合に、黒褐色のコーヒーとは似ても似つかない飲み物です。ハーブ感覚で飲めるコーヒーとも言えますが、どんなコーヒーができるのかが焙煎の楽しさになるかも知れません。
次回は「深煎りのコツ」を紹介します。
第400話 (完)
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