シリーズ『くすりになったコーヒー』



「ブロンドロースト」を知ってる人はまだ少数派です。2017年、スターバックス社が「今までに商品化されたことのない超浅煎りのコーヒー豆」と言ったのが始まりです。ところが実際に商品化されたのかされてないのか、筆者の住むJR蒲田駅界隈で探してみても見当たりません。ならばネットでと検索しても、一体どれが該当する商品なのかよくわかりません。ところがごく最近、Facebookに話題提供してみたところ、それらしき商品をネット購入したFB友達が、実物を見て解説してくれました。


 先ずは「ブロンドコーヒーとは何か?」を書いてある、スタバ社の広告(?)とも思われる記事(英文)を紹介します(詳しくは → こちら)。



 記事の書き出しの文章を日本語にしてみます。『ブロンドローストという言葉は最近どこにでもあり、ますます人気が高まっているようです。もし今は疑問に思っていても、心配は要りません。あなた一人ではないからです。新しい言葉のようにも聞こえますが、実はちょっと前から言われていました。2017年にスターバックス社がブロンドローストをメニューに加えたところ、多くの人から褒められたのです。ブロンドローストは以前からある最も浅いローストよりもさらに浅い。そのため、茶色く焦げたローストのような苦味がなく、より多くの人にとって飲み易くなっています。ブロンドローストを理解することは、コーヒーのもう1つの飲み方を知ることになるのです。』


 とまあこんな具合の解説で、スタバがいうブロンドローストは、従来の8段階分類より浅煎りということなのです(図2を参照)。ライトより浅く焼いた豆について、その風味はもとより、化学組成についても情報はほとんどありませんから、記事の通りで「もう1つの飲み方」に間違いはないでしょう。しかし、実際の商品を購入したFB友達が送ってくれた写真と、上記の記事に書かれているブロンドローストは同じ色には思えません。何故これほどの差があるのでしょうか?



 筆者は、「スタバのような大会社が、書いてあることとやることがこれほど違うとは・・・」と疑心暗鬼でいたところ、日本コーヒー文化学会の狭間寛さんが教えてくれました。『ブロンドローストはスペシャルティ潮流を背景に2012年3月に日本へ導入されました。記者会見で当時の関根社長は「従来の深煎り、中深煎りから焙煎の幅を広げて中煎りを採用した」と表明。スタバ的にブロンドは中煎り』との逸話があるのだそうです。つまり、スタバのブロンドとは、純金色のゴールデンではなく、茶色っぽいブラウニッシュゴールデンなのです。ですから8段階で位置づけると、坂さんが取り寄せた商品は元社長の話の通り正真正銘の中煎りということでした。図1の記事にある「ライトより浅く煎ったブロンドロースト」の商品化は、スタバといえども未だ実現していないのです。


●ライトより超浅煎りの焙煎豆は、希太郎ブレンド以外にない。


 具体的に言えば初代は豊橋のワルツ社との共同研究で開発した「カラダ想いブレンド(詳しくは → こちら )」、二代目はNHK命名で医薬経済社が商標登録した「希太郎ブレンド(詳細は → こちら)」。それ以外にはありませんが、もし自分で焙煎する気になれば、それなりのものを作ることは簡単です。


 図3は、広島の風紋亭夏朝さん作の希太郎ブレンドで、黄色い豆は、夏朝さんが市内で見つけた「超のつかないライトロースト」です(詳しくは → こちら)。夏朝さんは市販の浅煎りを使って、それをフライパンで焼き込んでブレンドして、毎朝欠かさず「いつもの展望台」で、日の出を待つ人たちに振舞っているのです。味に文句をつける人は一人もいません。



 最後に付け加えます。希太郎ブレンドの超浅煎り豆の特徴は、図2に示す生豆とライトローストの間に位置していて、1ハゼ音が聞こえる直前の段階です。生豆の水分がまだ完全には蒸発し切れていないとも想像できます。従って、焙煎に独特の色と香りをつけるメイラード反応は、極めて初期の段階に留まっています。それは一体どんな状態なのか、詳しいことはデータ不足でわかりませんが、アームズメソッドの竹林利明さんがデータを取る目的で試行錯誤しておられます。頑張れタケちゃん(詳しくは → こちら )。

(第424話 完)



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