シリーズ『くすりになったコーヒー』



 かつて不治の病と恐れられたがん(癌)ですが、最近は「早期発見・早期治療」、「内視鏡の進歩とロボット手術」、「抗がん剤の個別化」などが重なって、がんと共存しながら社会復帰する人が増えてきました。去る4月22日発行のNature誌に、過去35年間の各種がん生存率(図1)の変化と、2017年度の臓器別がん死亡者数(図2)をまとめた“Cancer Index”が発表されました(詳しくは → こちら )。



 先ず図1を見てください。赤丸はかつての生存率で、青丸がその後に向上した生存率です。生存率の向上幅には臓器によって大差があります。筆者も経験した前立腺癌では、かつての68%が98%まで驚くほど向上しました。ほとんど進歩が見られないのは子宮頸がん、逆に生存率が低下したのは子宮体がんです。


●生存率の低い食道がん、肝がん、膵がんでは、コーヒーによる発がんリスクの低下がみられる(図3も参照)。


 疫学調査によれば、図1で茶色の矢印で示す臓器がんは、コーヒーを飲む群で発がんリスクが低いと報告されています。ですから、これらのがんでは治療よりも予防が優先するとのことで、毎日のコーヒー喫飲が強く推奨されることになるのです。なかでも肝臓がんの場合には、コーヒー喫飲で発がんリスクは50%以下まで激減します(図3も参照)。


 では次に図2を見てください。このグラフは2017年度の世界のがん死亡者数をまとめたものです。肺がんによる死者が最も多いということは、喫煙の影響が肺に最も強く及ぶということです。不思議なことに、肺以外の5つのがん(図中の矢印)に対して、コーヒーは発がんリスクを下げるのですが、肺に対しては無力です。肺に対するタールの毒作用が余りにも強いので、流石のコーヒーも無力なのかもしれません。



 次に図3は、これまでにも何回か登場したグラフで、毎日のコーヒー喫飲と臓器発がんリスクの関係です。左端の肝臓から中ほどの前立腺までは、コーヒーで発がんリスクが有意に下がるのですが、甲状腺から右の臓器の発がんはコーヒーとは無関係です。そして臓器全体としては、コーヒーによる発がんリスクの低下はほとんど見られないということです。コーヒーと臓器発がんの関係は、臓器特異的なのです。



 では、図1と図3を比べてみてください。図1で生存率の低い臓器がんのなかに、図3では左寄り青色棒グラフの臓器がんが多いことにお気づきと思います。繰り返しますが、「治療薬のない臓器がんであっても、コーヒーの予防効果が期待できる」ということです。特に肝臓癌では、毎日のコーヒーが発がんリスクを0.5以下にまで下げてくれます。その効き目には人種差もなければ、食生活など文化の差も見られないことも解っています。


●誰もが美味しく飲めるコーヒーができて、それが世の中に普及すれば、肝臓がんで苦しむ人が減る。


 今その域に一番近いコーヒーは「希太郎ブレンド」と言って間違いありません。


(第426話 完)



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