シリーズ『くすりになったコーヒー』



 新年おめでとうございます。年の初めにお年寄りが元気になる話です。


 実はこの話は日本コーヒー文化学会の「珈琲と文化」に掲載したのですが、「わかりやすい」と評判が良いので、転載させていただきます。年頭からの手抜きをご容赦ください。


 さて、高齢者はコロナに弱いそうですが、子供だって「食べて寝て」を繰り返さないと元気ではいられません。当たり前のことです。ただし子供は高齢者にない特別の早技を持っています。24時間の体内時計のスイッチを素早く切り替えられるのです。どうしてでしょうか?


 答えは今世紀の生命科学に見られます。体内時計はエネルギーを作るメカニズムと直結していて、元気にエネルギーを作っているのは昼間、原料を補給するのは夜です。子供の昼と夜の割合はほぼ1:1で、切り替え時間は瞬時です。しかし年を取るにつれて昼が長くなる。しかも長くなった昼の天気は快晴とは行かず、曇りがち。何故でしょうか?


 答えは「切り替えスイッチの劣化」です。もっと簡単に言うと「スイッチを切り替えるエネルギーがない」のです。パソコンに例えれば、バッテリーの充電率が20%を下回ると、画面を暗くしないと早死にするのと似ています。体内時計を動かすエネルギーは、実はバッテリー依存です。そして子供のバッテリーはいつも満タンになっているのです。


 さて、その日に食べた栄養素はミトコンドリアでエネルギー分子ATPに変わります。ミトコンドリアでエネルギーを作っているのは代謝酵素で、その酵素を何回も繰り返し使えるようにしているのは、使い捨ての小さな捕因子NAD。これが酵素について働きます。NAD-酵素の複合体が1回働くと、エネルギー分子ATPが1つできて、それでお役御免・・・NADは酵素から離れますが、酵素は新たなNADとくっついて次の仕事をするのです。


 では酵素から離れたNADの運命はどうなるのでしょうか?その答えは、昼と夜を切り替える時計遺伝子や、老人病を予防する長寿遺伝子由来のタンパク質によって分解されてしまいます。しかしそのとき、それぞれのタンパク質は元気になって、持ち場の仕事をはじめます。その仕事とは、体内時計の管理と老人病の予防です。


 さあお解りでしょうか?年を取ると減ってくるNADなのですが、これが実はバッテリー。不足すると、時計遺伝子や長寿遺伝子が影響を受けて、働くことができません。こういう状態を、お正月に例えて言えば、お年玉を貰った子供が元気百倍になるように、NADを貰ったお年寄りは、バッテリーが満たされて、若返りを果たすのです。昼と夜が仕分けされ、夜はぐっすり眠れるし、老人病は逃げ出して、お正月に相応しい、芽出度し芽出度しになるのです。


 さて最後に、NADは何処からやって来るかと言えば、それはコーヒーのナイアシン(ニコチン酸)というわけです。


 それでは皆さん、ニコチン酸をたっぷり食べて元気でコロナに勝ちましょう。



(第431話 完)



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