シリーズ『くすりになったコーヒー』



 OT&Pは、香港にある国際的に認定された医療クリニックで、そのHPのブログ欄にCOVID-19関連の実に大胆な記事が載っていました(詳しくは → こちら )。来年を予見するかのような内容なので、翻訳して紹介します。 博士が日頃思うことと同じなので、何だか香港の夜景を思い出します。




●ビタミンB3:COVID-19治療薬としての可能性(翻訳:岡希太郎)


 ビタミンB3とその誘導体には、医薬品としての長い歴史があり、最近になって、老化予防とCOVID-19の治療に使えるのではないかとの関心が高まっています。


 去る3月上旬に電子版で発表された論文“COVID-19 Infection the Perspectives on Immune Responses(文献1)によれば、「ビタミンB3は肺を保護するので、咳が出始めたらすぐに使用する必要がある」とのことです。これが実際に適切な指摘であるとの複数の実験的証拠がありますが、COVID-19の治療戦略に見られる全ての方法と同様に、証明されるまでにはしばらく時間がかかります。当分の間は、ビタミンB3を含むビタミンB複合剤を服用しても害は全くありません(下の図を参照)。


 20世紀初頭、ビタミンB3の欠乏が「ペラグラ」という病気の原因であることが判明しました。ペラグラは米国南部で最初に特定されましたが、これは精製されたトウモロコシをベースにした食事が不十分だったためです(訳者注:トリプトファンを含んでいないため)。ペラグラによって引き起こされる皮膚の発疹は「赤い首」(訳者注:ペラグラの光過敏症のため首回りが日焼けする)という用語の由来であり、しばしばスネークオイルを使って治療されました。


 1945年から61年の間に、いくつかの研究でビタミンB3が肺結核の治療に有用であることがわかりましたが、現代の抗生物質に取って代わられました。最近になって、HIVの治療のために試験され、有望であることがわかっています。また別の論文によれば「21世紀の初め、この小分子はそれ自体が治療薬となるし、結核とHIVに対して有効な新薬のモデル化合物になる可能性がある」と述べています(文献2)。



 ビタミンB3は60年もの間、高コレステロールを治療するために効果的に使用されており、HDL「善玉コレステロール」を30%も増やすことができます(文献3)。しかし、スタチン系薬剤が開発されてからは、スタチンに耐薬性がない人、またはスタチンを使用しているにもかかわらずコレステロール値が高い人を除いて、使用されなくなりました(文献4)。


 ビタミンB3は、体内でNADに変換されます。これは、特にハーバード大学のジョン・シンクレア教授によって、その老化防止特性が盛んに研究されている化合物です。彼が共著者になっている論文には次のように書かれています。「NADレベルは年齢とともに着実に低下し、その結果、物質代謝が変化して、病気にかかりやすくなります。老齢または病気のモデル動物のNADレベルの回復は、健康を促進し、寿命を延ばすことができます。NADは、1つの病気だけでなく多くの病気に対して体の回復力を高める可能性を秘めていて、かつ安全で効果的な分子なので、体内でこれを増量する分子の探索が待たれます。NADは人間の健康寿命を延ばすことができるのです(文献5)」。そして、NADブースターとしてのサプリメントが現在活発に販売されていますが、それらが有益な効果をもたらすという証拠はまだありません(文献6)。


 ビタミンB3は、現代の新薬に取って代わられ、それらが実地医療で使われています。しかし、HIV、COVID-19の治療薬として、そしておそらくアンチエイジングサプリメントとして復活する可能性があるのです。


引用文献:

1.https://www.nature.com/articles/s41418-020-0530-3

2.https://academic.oup.com/cid/article/36/4/453/439703

3と4.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24184940

5.https://www.cell.com/.../comments/S1550-4131(18)30122-0...

6.https://khn.org/.../a-fountain-of-youth-pill-sure-if.../


(第433話 完)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 空前の珈琲ブームの火付け役『珈琲一杯の薬理学』

 最新作はマンガ! 『珈琲一杯の元気』

 コーヒーってすばらしい!

 購入は下記画像をクリック!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・