シリーズ『くすりになったコーヒー』


 「コーヒーの木を育てる会」は日本コーヒー文化学会会員の堀直樹さんが2019年にFacebookに立ち上げた趣味の会です。Facebookにログインすれば、誰でも何時でも参加できます(詳しくは → こちら)。



 立ち上げた本人がびっくりするスピードでメンバーが増えて、今では2千人に近づいています。ほとんどのメンバーが個人ですが、中に数名のコーヒー農園経営者が加わっています。ハワイ、沖縄、フィリッピンなどの、それぞれに特徴がある農園なので、個人のメンバーにとって、専門的知識と技術を見たり聞いたりできる便利なメンバーとも言えそうです。


●個人メンバーの栽培方法は、99.99%が自宅の鉢植えです。


 敷地に余裕のあるメンバーは、冬の寒い時期にはビニールで囲った小さな温室を作ったりして育てていますが、我が家の場合は冬は室内で、夏場は表に出しますが、日の当たらないビルの谷間が幸いして、猛暑の中でも枯れることはありません。冬場の室内暖房は家族が起きている間だけ。夜中はかなりの低温になりますが、多分3℃以下にはならないだろうと思います。コーヒーの木の鉢植え管理は、枯らさないということでなら、難しいものではありません。写真はMasaya OkadaさんがFacebookに投稿した若木の鉢植えで、手前から時計回りに2,3,4年物と思います。



●「コーヒーの木を育てる会」は個人で自宅で育てる人の集まりです。


 会のメンバーは例外なくコーヒー好きの人たちです。この日本で、熱帯地方のコーヒーの木を育てようと思う理由は何でしょうか?答えは「サクランボに似たコーヒーチェリーに愛着を感じるから」だと思います。筆者もその一人ですが、あわよくばその可愛らしいチェリーを豊作にして、一杯でもよいから「全部自分で作ったコーヒーを飲んでみたい」と思っているのです。英語でも“From seeds to a cup”というキャッチフレーズがあるようです。でも実際に成功した会員はほんの数人居るか居ないかの段階です。そうです、この会に参加すれば、今からでも遅くないのです。


●チェリーを見るのはちょっと難しいが花は確実に咲く。


 種から育てると、3年くらいで成木になって花がつきます。写真は今年我が家に咲いた花ですが、ミカンの花に似た、でも香りはジャスミンのような、直径2.5㎝の可愛い花です。コーヒーノキとクチナシは同じアカネ科で、花の大きさは随分違いますが、香りは似ているのかも知れません。花を摘み取って干してお茶に仕立てた「コーヒー花茶」が、観光農園のお土産として売られています。


 ところで、コーヒーの花にも豆と同じカフェインが含まれています。ですから、お茶やコーヒーと同じで、飲みつけると癖になるかも知れませんが、花茶は収穫量が僅かですから、まだ癖になった人を見たことはありません。沖縄の飛行場の売店では、コーヒーの葉茶を売っていますが、味は今一つで、珍しさのみがお土産です。葉茶ならば、コーヒーの木を育てれば、誰でも簡単に作れます。



 カフェインを含んだコーヒーの花の密は、ミツバチにとってこの上ないご馳走だそうです。何故なら、ミツバチもヒトと同じで、カフェインが癖になって、カフェインを求めてコーヒーの花に集まるのだそうです。コーヒーの蜂蜜は、ジャスミンの香りがする高級品で、これにもカフェインが入っていますから、癖になるかも知れません。ただし食べ過ぎは生活習慣病になるので要注意です。写真は、ジャマイカ産のブルーマウンテンの蜂蜜で、現地で商品化されていて、日本ではアタカ通商に在庫があるかも知れません。


●花が咲いてからチェリーになるまでは半年かかる。



 上の写真は堀さんのFacebookから引用しました。肥料はあまり要りませんが、使うとしたらこの写真のような無機肥料でしょう。筆者は他に、落ち葉を捨てずに、鉢の周囲に埋め込んでいます。おまじないみたいなものですね。


 さて半年かけて赤くなった果実はコーヒーチェリーと呼ばれますが、サクランボとの違いは、柄があるかないかだと思います。大きさも色もそっくりです。それでも種には違いがあって、サクランボは1つですが、コーヒーの種は2つが向き合って仲良く合わさっています。つまり1つのチェリーから2つの生豆が取れるのです。収穫したら果肉を剥がして自然に干して乾かしますが、はじめはほとんど無色に近いベージュ色です。


 さて皆さん、21世紀の地球は温暖化が止まらない状態で、もしかすると赤道を挟んだ南北25度の「コーヒーベルト」が北へ南へ広がるかも知れません。東京あたりまで広がってくると、関東平野にもコーヒー農園が出来る可能性があります。そうなったら都心のマンションのベランダにも、コーヒーチェリーが実るかも知れませんよ。でもそれがいいのか悪いのか、コーヒー好きの筆者でも、気持ちはやや複雑です。


●何は兎も角「コーヒーの木を育てる会」に参加して、Facebookに愛木の写真投稿をお待ちしています。

(第448話 完)