シリーズ『くすりになったコーヒー』
関節炎には主に関節リウマチと変形性関節症の2つがあります。今回の論文は変形性膝関節症で、図1のように膝軟骨(茶色の部分)がすり減って、骨同士がこすれ合うため、激痛が走ります。
●CGA(クロロゲン酸)が膝軟骨細胞を守る(詳しくは → こちら)。
膝軟骨細胞は、物理的・化学的な酸化ストレスを受けると、アポトーシスを起こして死んでしまいます(図2を参照)。アポトーシス死とは、昔から知られていたネクローシス死とは違っています。ネクローシス死とは、細胞が破れて、その中身が周辺に漏れ出して、組織の炎症を起こすような死に方です。これに対してアポトーシス死とは、細胞が幾つもの小さな顆粒に分断されて、それが周辺の食細胞に食べられて無くなってしまう死に方のことです。図2の紫色に変形した細胞は、アポトーシスが進行中のイメージ図です。この論文の他にも、CGAが酸化ストレスを減らしてアポトーシスを予防するとの論文が多数出ています(詳しくは → こちら)。
図2の左は、酸化ストレスを受けた軟骨細胞が、アポトーシスを起こして死ぬことで、膝関節の変形が起こることを描いています。右の図は、酸化ストレスを受けた細胞が、CGAによってオートファジーを起こし、それがアポトーシスを阻止することで、細胞は死なずに再生することを描いています。
以上の知見は、細胞レベルの実験で分かったことです。これと同じことが、生きた動物やヒトの体で起こるかどうかは、まだ解りません。先ずは実験動物で確かめることが先決です。ただし、「変形性膝関節症の患者さんがコーヒーを飲むと悪化する」という話はありません。もしコーヒーが好きな患者さんなら、飲むか飲まないかの判断基準の1つとして、この論文を参考にしては如何でしょうか。
(第453話 完)