シリーズ『くすりになったコーヒー』


 自己免疫疾患に分類されている乾癬(Psoriasis)に特効薬はありません。薬は色々あるのですが、どれも「効き目と障害作用のバランス」を気にしなければなりません。そんな難病の乾癬に、初めてコーヒー論文が登場しました。その論文を紹介する前に、まずはコーヒーとメタボリックシンドローム(MS)または2型糖尿病(2DM)との関係について、最新のメタ解析データを知っておきましょう。


●コーヒーを飲む習慣は、MSや2DMの罹患リスクを減らす(詳しくは → こちら)。


 図1はこの論文にまとめられた2DMの危険因子と予防因子です。6項目の1つに「食の因子」があり、矢印の向きをよく見ると、「コーヒーを飲まない群に2DMが多いことが解ります。




 更に図2をご覧になると、コーヒーがその他の因子に比べてかなり優れた予防因子であることが解ります。しかし、数ある強力な危険因子と対比して考えると、強力な危険因子を無視してコーヒーだけに頼っても無意味であると思われます。お酒を止めなければ、肝臓の薬をいくら飲んでも効かないのと同じです。




 さて、乾癬のお話に戻して、どうして2DMが関係するのでしょうか?


●生活習慣病の2DMやMSの患者は、乾癬を発症するスクが高い(詳しくは → こちら)。


 どうしてこうなるかの1つの根拠として、この論文では乾癬と生活習慣病のバイオマーカーが似ていることを指摘しています。なので、2DMやMSを予防するというコーヒーを飲むことで、乾癬のバイオマーカーも抑えられて、その結果「乾癬を予防できるのではないか」と考えたのです。そこで今回紹介する論文です。


●コーヒーを飲む習慣は、乾癬を予防する(詳しくは → こちら)。




 かつて、乾癬とコーヒーは無関係との論文が3つありました。ところがこの論文では、乾癬が2DMのリスクを高めるとの知見に基づいて再調査を実施したのです。未治療の乾癬患者221名を喫煙群、メタボ群、その他群に分けて、病気の重症度をカルテ記載のPASIスコアで、コーヒー摂取量を自己申告の1日杯数で調べました。すると、コーヒーを飲む群は飲まない群より軽症で、PASIスコアが低値でした(P<0.001)。しかし、1日に4杯を超えて飲む群では逆に高値となってしまいました。


 更に、1日3杯飲む群にはMSが少なく、PASIスコアも低値(P<0.001)、非喫煙群ではオッズ比74.8%の最低値となっていました(P<0.001)。そこで結論として、


●タバコを止めて毎日コーヒーを飲んでMSを予防すれば、乾癬の重症化を予防できる。


 最後に、「病気は1つだけではやって来ない。必ず何かの合併症が付き纏う」。こんな東洋医学のような話が、今週号のNature誌に掲載されて、治療にあたる臨床家の注意を喚起しています。


(第348話 完)


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