シリーズ『くすりになったコーヒー』


●「コーヒーを飲むとドライアイになったり症状が悪くなったりする」は嘘!

 嘘の根拠は、「カフェインの効果で尿が多く出るので、涙が減って目が乾く」というのです。医学知識がない人が聞くと「なるほど!」と納得してしまいます。でもこれは噓の話で、そんなことはありません。


●ノルウエイ、オランダ、イギリスでの85,000人の調査で、食事で摂るカフェインがドライアイ症状を悪くすることはない(詳しくは → こちら )。

 どうしてこれほど多人数の調査が必要だったのでしょうか?それは一般の人の間で「ドライアイ」の正確な知識が欠けているためではないでしょうか。日本にはドライアイの大衆薬が色々あって、使い方に一応の基準があるのですが、それでも年齢を問わず悩みを抱えている人は随分と多くいらっしゃるようです。しかも人それぞれの症状は色々です。この論文は、ドライアイとカフェインの関係が有るのか無いのか、決着をつける目的で計画されました。調査結果は「世間で言われるほどの影響はない」とのことでした。


●「カフェインは悪玉ではないだろう」との予測は以前からあった。

 やや古い論文ですが、カフェイン悪玉説を否定するような日本人データがあります(詳しくは → こちら )。この論文のヒト試験では、2~3杯のコーヒーに相当するカフェインを、飲み薬として飲む群と、水だけを飲む群の涙の量を比較しました(涙液メニスカス法:を参照)。その結果、カフェインを飲む群の涙の量が有意に多かったのです。つまり、涙腺においても腎臓の尿細管と同じように、カフェインが水分を放出するように働いているのです。



 もう1つ紹介しましょう。ドライアイではない20代の男女40名を2群に分けて、カフェイン5㎎/体重に調整した水溶液または水200mLを飲む実験を交互に行って、ろ紙を使ったシルマー試験(を参照)で、ろ紙に浸み込む涙液の長さを測定しました(詳しくは → こちら )。



 実験結果は明白で、カフェインは性別、年齢、性差と無関係に、涙液分泌量を増やしました。残念なことに、これら2つの論文では、ドライアイ患者の試験は含まれていません。


 ではドライアイとはどんな症状で、どう診断するのでしょうか?ちょっと眼が変だなと感じたときに、自分でできる方法を見てみましょう。


●ムコスタ点眼薬を開発した大塚製薬のHPが分かり易い。

 ドライアイには色々な自覚症状があって、しかも人によって“てんでんばらばら”なので、「ドライアイってどんな症状?」について誤解が生じやすいそうです。そこで大塚製薬が作ったのは「動画でわかるドライアイの誤解」です(詳しくは → こちら )。

 もう1つ役に立ちそうなのは「ドライアイの自己チェック表」です(詳しくは → こちら )。



 この表に自分の症状と合致する項目が3つ以上あれば、ドライアイを疑って市販薬を試してみるか、辛ければ眼科を受診することになるのです。でもその前に、自分でできることがあるかも知れません。


●ドライアイは生活習慣と関係している。

 ドライアイの治療薬は一般用医薬品として数多く売られています。自分の症状に合わせた薬を選ぶのですが、その前に自分の生活習慣の中に原因を探ることが大事です(詳しくは → こちら )。

 この論文に書いてある生活習慣とは、睡眠不足、更年期障害、心配事などの不安感、リュウマチの持病、鎮静薬を服用中、目の手術をした、食生活の乱れ、加工食品が中心の食事、エアコンの使い過ぎなどが指摘されています。そのなかで注目したいのは、ドライアイは「カフェイン飲料を飲まない」人に多いということです。つまり、カフェインがドライアイの症状を改善している可能性があるのです。そこで考えられることは、


●コーヒーもお茶も飲なない人がドライアイに罹ったら、試しにどちらかを飲んでみては如何ですか?

 この関係を漫画にして書いてみました。吹き出しの番号順に眺めてください。



(第465話 完)