シリーズ『くすりになったコーヒー』


 還暦を迎えると誰もが思うことがあります。「よくぞここまで来たもんだ。でもあと10年は頑張るぞ」と、満足感と更なる期待感が重なります。しかし、実際に10年経つと「古来稀なり」の70歳になって、疲れを感じるようになるのです。後期高齢にはまだ5年を残していますが、加齢性虚弱を避けて通ることはできません。


 加齢性虚弱とは、Frailtyの日本語訳です。しかし、英語と日本語ではニュアンスに差があるそうで、厚労省(公益財団法人長寿科学振興財団)は英語のニュアンスを籠めて「フレイル」を推奨しているようです。ではそのニュアンスの差とは一体何のことでしょうか?


●「フレイル」には『対処すれば元に戻る』意味があるが、「加齢性虚弱」にはない(詳しくは → こちら)。



 同財団は、ジョンズホプキンス大学のLP Friedらが定義したFrailtyの具体的内容を引用して「フレイル」を次のように説明しています。


1.体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2.疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
3.歩行速度の低下
4.握力の低下
5.身体活動量の低下


 これらとは別に、以前から「三大老化現象」と言われているのは、運動能力低下、虚弱体質、持病の悪化であり、更にその最大の原因は糖尿病と心血管病となっていました。これらはどれもフレイルに属す症候ですが、フレイルには気力の低下などの精神的な変化も含まれています。特に糖尿病や心臓病などの持病を抱えていたりすると、その影響が強く出ることがあります。フレイルの状態とはストレスに弱い状態でもあって、死亡率の上昇や身体能力の低下もにつながります。例えば、風邪をこじらせて肺炎を発症したり、筋力が弱って転倒したり骨折することもあります。そして若者と絶対的に異なる特徴として、肺炎や骨折で入院すると寝たきりになってしまうことが多々あることです。


 では、どうしたらフレイルを予防できるか、あるいはフレイルになってしまったらどうすれば抜け出せるか・・・健康長寿財団が健康長寿のための12か条の予防法を提案しています(下図を参照)。この図の9番に「フレイルを防ごう」とありますが、上記したようにフレイルには身体・精神の両方が関わっていますから、実はこの図の全体がフレイルの予防と解釈しても良さそうです。



 最後に、この図には1つだけ欠けている大事なものがあることを指摘しておきます。


●コーヒーを飲む習慣がフレイルを予防する(詳しくは → こちら)。


 コーヒーの効果が出やすい60歳以上の女性3289人を調査した結果、1日2杯以上のコーヒーを飲んでいる人がフレイル状態のリスクを回避するハザード比は次のような低値でした。


・敏捷性0.71
・歩行機能0.66
・肥満者の運動機能0.60
・高血圧患者の歩行機能0.70
・糖尿病患者の日常生活不活性化0.30


 こういうことですから、自分自身や家族や周囲の人が、フレイルかも知れないと感じたら、先ずは1杯のコーヒーを飲むことが最も簡単で速効性を期待できることなのです。お試しあれ。


(第346話 完)


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