普段コーヒーを飲まない人がコーヒーを飲むと血圧が上がります。しかし、普段飲みつけている人で血圧が上がることはありません。ですから、初めてコーヒーを飲んだときに血圧が上がったとしても、毎日飲んでいるとそういうことは起こらなくなるのです。


●何故そうなるのか、理由はよく分からない。

 毎日コーヒーを飲んでいると、血圧への影響がないだけでなく、心血管系の病気に罹るリスクが下がるし、心臓病で死亡するリスクも減るのです。この現象は各国の疫学調査で確かめられているので、人種にも食べ物にも関係のない世界共通の現象なのです。ですから、コーヒーを飲む習慣は心血管系の寿命を延ばすとも言われるのです(詳しくは → こちら)。

 コーヒーには100種類程度の化合物が、病気の予防と回復に寄与する関与成分として含まれています。その1つ1つに独自の薬理作用があって、人体の至る所に分布して作用を発揮します。しかも面白いことに、全く逆の効き目を示す複数の成分が同時に含まれています。そして不思議なことに、正と負の作用を示す化合物のバランスが、健康を維持して病気を予防する方向で保たれているのです。話は非常に複雑なのですが、最近になって、動脈性高血圧を標的にして、コーヒー成分の薬理作用を整理して描いた図が発表されました(詳しくは → こちら)。



 図の特徴をまとめます。


1.血圧を高める作用を赤色で、下げる作用を緑色で描いてある。
2.黒い四角に関与成分の名称が書いてある。
3.白い四角に薬理作用が書いてある。
4.A1R,A2BR,A2ARは、カフェインの受容体で、細胞内に「カフェインが来たぞ」と伝える。
5.TPR:全末梢血管抵抗(血液の流れ難さを表わす数値)
6.PDE:ホスホ・ジ・エステラーゼ
7.ACE:アンジオテンシン転換酵素
8.NAD(P)H:リン酸化NAD
9.NAD:ニコチナミド・アデニン・ジ・ヌクレオチド
10. NO:一酸化窒素


●高血圧をコーヒーで治すことは出来ないが、飲み続けることで心血管系の老化と病気の発症リスクを軽減できる。

 健康を維持するために血管を保護しておくことは大事です。そのために役立つ生活習慣は色々あるでしょうが、毎日軽い運動を続けることと、1日に2∼3杯のコーヒーを毎日飲むことは、エビデンスがしっかりあって、かつ癖になって続けられる生活習慣と言えそうです。

(第512話 完)