講演会でよくある質問は「デカフェのコーヒーでもいいですか?」。すると筆者は「心配な病気がありますか?それによって違います」などと薬のような返事をしています。質問した人は、「今は元気だから・・・まあいいか」と思うのか、更なる突込みはありません。なので司会者は次の質問に移ります。
●元気なうちは、どんな病気に罹るか解らないので、好きな方を飲むしかないし、カフェイン入りを飲めない人が無理して飲むとろくなことはない。
と言うことなのです。実はコーヒーの病気予防効果は、病気によって違うのです。デカフェについては、今は未だ調べられた病気が少ないので、全て答えられるわけではありませんが、信頼できる論文があるものについて、選んで紹介することにします。
●太りたくなければカフェイン入りでもデカフェでも、好きなコーヒーを飲みなさい(詳しくは → こちら)。
若い人が特に気にする太り過ぎですが、美しくなりたいという気持ちと裏表なので厄介です。特に週刊誌やネットで、「カフェインには脂肪燃焼効果がある」と言うような記事を目にすると、無理してカフェイン入りを飲んだりするのです。
図をご覧ください。左端がカフェイン入りレギュラーコーヒーの場合です。青い棒グラフは体格指数BMIで、色の薄い方から標準体重、肥満、肥満症に分類してあります。黄色の棒グラフは年齢別で50歳で分けてあります。
縦軸の数値は、1日に飲んだコーヒー1杯ごとに、4年間の体重変化を示したもので、縦軸0から下向きはBMI低下を、上向きはBMI増加を意味しています。年齢についても意味は同じです。カフェイン入りかデカフェかに注目すると、どちらもBMIが大きい人ほどコーヒーの効果も大きいことが解ります。また年齢が50歳を過ぎるとどちらのコーヒーも効果が減ることが解ります。
●砂糖、クリーム、ホワイトナーを加えて飲むとBMIが大きくなる。
これもよくある質問ですが、まとまった論文が少ないのが現状です。今回紹介している総説論文にも、残念ながら牛乳がありません(図を参照)。しかし、牛乳が悪いという論文もありません。2021年に発表された「単一食品と発がん予防のメタ解析論文」を見ると、コーヒーは肝臓がんと皮膚がん、牛乳は結腸直腸がんのリスクを軽減する食品として、将来的にも否定されないと書かれています(表を参照:詳しくは → こちら)。ですから、コーヒーに何か加えて飲みたいが、砂糖、クリーム、ホワイトナーは飲みたくないと思う人は、牛乳を選ぶのが一番良いと言えるのです。
●朝食に大麦シリアルと牛乳、合わせてカフェイン入りレギュラーコーヒーを飲めばダイエットとがん予防に一石二鳥になる。
これと同じことがデカフェコーヒーにも当てはまれば良いのですが、そうは問屋が卸しません。残念ながらデカフェコーヒーのがん予防効果は弱いものなのです。デカフェコーヒーに多くを望むことは無駄かも知れませんが、牛乳を入れることで多少の改善はできるかも知れません。少なくとも砂糖やミルクやホワイトナーを使わないということで、メタボへの道を断つ可能性が生じてくるのです。
●カフェオレでもカプチーノでも、はたまたコーヒー牛乳でもコーヒーと牛乳の相性は昔からずっと抜群です!
それでは皆さん、太り過ぎと同様に、瘦せ過ぎにもご注意ください。
(第514話 完)