シリーズ『くすりになったコーヒー』


この記事は、エステ・サロンとか美容皮膚科を考えている人のためになります。


●毎日コーヒーを飲んでいると歯がコーヒー色になる。


 しかも歯ブラシでいくら磨いても白くならない。それもそのはず、汚れた歯の脱色剤の性能評価に「コーヒーの汚れを消す効果」が試されているのです。コーヒーは着色の原因で、コーヒーでできた汚れが取れれば合格なのですが、それだけではありません。歯科用材料の耐着色性の評価に「コーヒーに浸けておいても色がつかない」ことが努力目標になっているほどです(詳しくは → こちら)。


 ところがコーヒーには逆の効き目もあるのです。あまり知られていませんが、毎朝捨て場に悩むコーヒー滓に脱色作用があるのです。筆者の苦い経験によれば、並外れて強力です。論より証拠、先ずはこの写真をご覧ください。



 写真左の中華どんぶりは普通にラーメン用に使っていたもの、右はコーヒー滓入れ専用に使っていたものです。毎朝コーヒーを淹れる度に、滓をこのどんぶりに貯め置いていたのです。ある日のこと、「あなた、中華どんぶりを滓入れにしないで下さい!」。何とそのとき初めてどんぶりの底絵が消えていることに気づきました。以来、滓をどんぶりに淹れることを止めたのでした。


●皮膚のシミや皺がコーヒー・スクラブで消えるのか?


 Youtubeを覗いてみますと、英語でも日本語でも動画が沢山投稿されています。明らかに化粧品メーカーかエステサロン発と思われる投稿もありますが、個人のYoutuberによるものも数多く出ています。見たことのない方は、一度覗いてみてください。


 シミや皺で悩んでいる人が患者と言うわけではありませんが、加齢に伴う悩ましい身体の変化であることに間違いありません。そこでコーヒー・スクラブの実演や効能のPRはYoutubeにお任せして、ここでは学術論文に書かれている事例を紹介します。


●子供から大人まで、顔のシミの原因は、紫外線UVBによる日焼けでできる小さな着色斑から始まる(詳しくは → こちら)。


 UVBによる日焼けの小さな着色斑は、18歳前後に出現し、20歳までに急増して、その後は加齢に伴って徐々に増えてくるのだそうです。最初は気づかない程度の僅かな着色なのですが、長い時間をかけてゆっくり色が濃くなって、40歳を過ぎるころから「消えるものなら消えて欲しい」と思うほどになるのです。そういう日焼けの後遺症のような濃い色素沈着には、UVBだけでなく、UVAの影響を見逃せないとの意見もあります(詳しくは → こちら)。UVAは波長が長いために、オゾン層を通過しますし、曇った日にも地上に降り注いでいるのだそうです。


●コーヒー飲用が皮膚のシミを減らすという疫学データを、コーヒー滓やコーヒーオイルを使って再現する実験はない。


 残念なことにありません。その代わり、色素細胞を使った実験で、クロロゲン酸が色素沈着を予防することが確かめられています。しかし、一度できてしまったシミを消す効果はクロロゲン酸にはありません。クロロゲン酸のようなポリフェノール類の抗酸化作用は色素を脱色できるほど強くはないのです。では一体、中華どんぶりの色を消したコーヒー滓とは何なのでしょうか?


 この疑問の答えも今のところありません。その代わり、生豆オイルに含まれている未知物質が色素細胞を殺すとの報告がありますが、焙煎豆とかコーヒー滓の成分としては未確認です。生豆オイルにもコーヒー滓のオイルにも共通の作用として、実験ラットにつけた傷の治りを良くする作用がありますが、シミ取り作用とは直接の関係はなさそうです(詳しくは → こちら)。


●コーヒー滓でシミが取れることを説明する薬理学は未知である。


 ですから、Youtubeの動画の中身を否定も肯定もできません。ただ言えることは、コーヒー滓でスクラブしたときの、肌のサラサラ、ツヤツヤ感は想像以上です。それを毎日続けることで、傷が治るのと同じように、皮膚の再生が早くなって、美肌効果に繋がるのか否か、ポジティブな答えが早く出ることを期待したいと思います。


(第338話 完)


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