シリーズ『くすりになったコーヒー』


 去る7月11日発行の米国内科学会紀要(Ann Int Med)に、欧州10ヶ国をまとめた疫学データ「毎日コーヒーを飲む人は長寿」が発表されました(詳しくは → こちら)。調査した10ヶ国のデータ間に有意差はありませんでした。更にこの研究が、フランスに拠点を置くWHO傘下の国際がん研究機関が牽引したこともあって、「コーヒーを毎日飲む習慣と健康長寿の因果関係」に、これまで以上の高い信頼性が確立されたのです。表1をご覧ください。




 コーヒーと寿命の疫学研究は前世紀末1999年に始まりましたが、当初は「統計学的有意差がありません」、「喫煙による死亡リスクの上昇を処理できません」、「コーヒー以外にも要因が重なっています」、「更なる検証が必要です」などの理由で、真面目な議論の対象にはなりませんでした。


 なかでも印象的な原著論文は、2002年という早い時期に「更なる検証が必要です」としながらも、有意差のあるデータを発表した鳥取大医学部発の論文でした(詳しくは → こちら)。実はコーヒーと健康の疫学研究で、最初の論文を発表したのは東北大学医学部でしたから、日本が世界のコーヒー疫学研究を牽引してきたと言ってもよいのです。


 さて、最初の発表から14年が経過した2013年、初の総説論文が発表されました。ほぼ同時にメタ解析研究も始まって現在に至っています(表2)。



 表2をご覧ください。メタ解析論文は2013年から年に1編ずつ出続けて、その度に調査人数が順調に増えてきています。つまり4編とも論文の出所は違うのですが、前年までの原著論文に次の1年分を付け足して解析してきたのです。そのため相対リスク(RR)またはハザード比(HR)は、0.78〜0.88でほぼ安定しているのです。これを言い換えれば、数ある原著論文にデータのバラツキが少ないこと、コーヒーの死亡リスク軽減効果には国別、地域別、人種別などの差がほとんどないと考えられるのです。表1の欧州10ヶ国データに、国別有意差がなかったことと同じです。


 当然のことながら、メタ解析に日本人データも含まれています。そしてその全死亡リスクの相対値は他国とほぼ同じです。


●コーヒーを毎日飲む習慣は、何処の国でも全死亡リスクを少なくとも10%軽減する。


 このデータの信頼性は相当に高いと考えられるので、健康長寿を目指す国や地方自治体が「国民・市民にコーヒー習慣の勧め」の政策を企画する日はさほど遠くないような気がします。


(第326話 完)


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