シリーズ『くすりになったコーヒー』
毎日のコーヒー習慣が肝臓病を予防するパワーは、恐らくウコンより優れています。ウコンまたはクルクミンには稀に肝障害の副作用がありますが、コーヒーにはありません。とは言え、これまでのコーヒー論文には、複雑な肝機能のどこにどんな作用があるのか、まとまった解説がありませんでした。
●コーヒーは、肝細胞の転写因子、酵素、受容体等に広く作用して、多様な薬理作用を発現し、それらが収束すると肝硬変と肝臓癌の予防につながる(詳しくは → こちら)。
図1は実によく描かれていて、コーヒーの薬理作用点が一目でわかります。上から順に、抗酸化性の転写因子Nrf2、細胞分化と代謝制御に関わる転写因子PPARγ、エネルギー代謝を亢進する酵素AMPK、脂質代謝を制御する転写因子SREBP1c、アデノシン受容体の1種A2A、これらのすべてが重要な役割を果たしています。
コーヒーを飲んだ人の肝臓では、これら5つのメカニズムが肝臓を保護する方向で働きます。薬では絶対に叶わないコーヒーだけのパワーです。5つのルートが最後に線維化と癌の予防に収束していることに注目してください。これを言い換えれば、5つのメカニズムが相乗的に作用する結果としての肝臓癌の予防ですから、コーヒー以上に確かな効き目はあり得ないと言えるのではないでしょうか。
仮に薬を使ってコーヒーと同じ効き目を得るためには、少なくとも5種類の薬を合わせて一度に飲まなければなりませんし、5つではまだ不足かも知れません。もし慢性肝炎の人であれば、炎症反応を抑えるために、Nrf2に作用する薬を飲めば済むでしょうし、脂肪肝を改善するならPPARγ、AMPK、SREBP1cのそれぞれに作用する3つの薬を飲めばよいし、線維化を予防するにはA2Aを遮断するカフェインを飲めば済むはずです。しかし、そんなややこしいことをしなくても、毎日コーヒーを飲んでさえいれば、慢性肝炎も脂肪肝も肝硬変も予防可能ですし、その上、肝臓癌の心配も薄らぐということなのです。
●1日に2-3杯のコーヒーを飲んでいれば、肝臓病が悪化して最後に癌になるリスクが半減する(論文多数)。
ですから、健康な人はもとよりですが、何らかの肝臓の病気を抱えている人にとって、コーヒーは正に救世主と呼べるものなのです。更には、一旦癌になった人も、コーヒーを毎日飲むことで、癌の増殖、転移、抗癌薬耐性化などのリスクが下がることを期待できるようになるのです。
(第325話 完)
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