シリーズ『くすりになったコーヒー』
去る6月13日。朝日新聞1面トップ記事は「カフェイン虐め」に相応しいものでした(詳しくは → こちら)。
●メディアがカフェインを虐める理由とは、「カフェインが効くから」なのだ。
薬がそうであるように、「両刃の剣」の使い分けは自分だけの特技にしておきたい・・・そして儲けようという似非専門家筋の欲望が、「良いものを悪い」と言って、「必要なら相談に応じます」とか何とか言って、何かの押し売りにつなげます。それでもお茶とコーヒーが普通の飲み物で居られるわけは、薬よりもサプリよりも先にあったからです。
さて朝日の記事ですが、「これだけの量を一気に飲むと死ぬ危険があります」との、日本メディア特有のカフェイン記事になっています。全体として急性中毒の危険を訴えるだけの記事で、コーヒーやお茶が健康に良いことはどこにも書いてありません。海外、特に欧州のこの手の記事には、健康に役立つという疫学研究が紹介され、その上で飲み過ぎ注意が普通です。写真左上の表の数値は、致死量の下限値といえるもので、ここまで飲む人は、ほとんどいません。まるで死ぬことを手助けするかのような数値になっています。
●阪神タイガース監督の金本知憲さんは、現役時代に1日10本の缶コーヒーを飲んでいた。
どこの缶コーヒーメーカーか知りませんが、金本缶コーヒーが商品化されるほどに、神戸界隈での金本人気は凄かったのだと思います。
これを1日10本も飲めば急性中毒に達している量にも関わらず、それでも金本さんは「これを飲むと元気が出る」とインタビューに答えていました。多分、金本さんはカフェイン代謝酵素CYP1A9の強い活性を持った人だと思います。普通の人は決してこんなには飲みません。
朝日新聞に書いてある1日1グラムのカフェインは、普通の人は飲んでいません。記事にあるように救急搬送された人も、この量を飲んだかどうか確かな証拠はないはずです。それよりも、これだけの量を飲む人は、同時にアルコール飲料も飲んでいるはずです。何故わかるかと言いますと、救急搬送が要請される時期は3月〜4月、米国なら9月〜10月に集中している、つまり学校や職場の歓送迎会の時期だからです。後はご想像にお任せしますが、問題はどうしてアルコールは虐められないで、カフェインだけが悪者になるのか・・・ということです。そしてその答えは、
●アルコールには課税されるが、カフェインは非課税だから。
米国で権威ある有名病院の1つメイヨー・クリニックのホームページを見ると、この嘘のような本当の話を実現する奇策が書いてあります。カフェインに課税すればカフェイン飲料の過剰摂取で救急搬送される人が減る・・・過剰摂取はカフェイン飲料の値段が安すぎるからと言わんばかりの無茶苦茶な提案です。
そこで筆者はもっと確かな方策を提案します。
●カフェインの成分表示を義務付けて、入っていそうでも入っていない商品には「カフェイン・フリー」と書いてもらう。
缶コーヒーやボトルコーヒーには、よく見ると小さく「カフェイン〇〇ミリグラム」の表示が見つかります。コーヒー以外の清涼飲料水の類には無表示のものが混じっています。人気商品のボトル茶にはほとんど書いてありません。カフェイン・フリーならば、フリーであると書くべきで、当局の指導をお願いしたいものです。
●TVや新聞で、「カフェインは色んなものに入っているから飲み過ぎに注意」といくらPRしても、肝腎の商品に記載がなければ、どうやって注意すればよいのかわかりません。
(第317話 完)
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