シリーズ『くすりになったコーヒー』

第314話 患者のための珈琲学(その3)慢性炎症を抑えるコーヒー


 先日、NHKガッテン!を見ていましたら「慢性炎症は万病のもと」と言ってました。加えて「健康診断でCRPを簡単チェック」とも言ってました(詳しくは → こちら)。でもこれには反論もあるみたいです(詳しくは → こちら)。


 筆者が思うにはNHKさんの狙いは悪くなかったのですが、慢性炎症の診断マーカーをCRPたった1つに絞ったことが騒ぎの元になったようです。放送直後のツイッターで、医者らしき視聴者から「ア―のコーの」と山ほどボヤキがあったそうです。お医者さんは診断が商売ですから、自覚症状も出ないほどの弱い慢性炎症を問題にするなんて、その意義すら疑ってしまうのが普通です。


 慢性咽頭・扁桃腺炎、歯周病、中耳炎などなど・・・我慢できる局所的炎症の持病が、時を重ねて大病になることがあるそうです。大病を治療しても治らないのに、何かのはずみで虫歯を治療したら大病が治った。そんな話が沢山あります。しかし、そういう医学はごく最近になって学会が認めたばかりの新分野です。


 気づいていても我慢できる局所炎症がその程度ですから、数ある炎症マーカーのうち、たった1つCRP値がちょっと上がったからといって、やれ糖尿病になるのとか、やれ癌になるのと言われたら、そりゃあ普通の医者は黙って聞き流すわけには行かないだろうと、筆者だってそう思ってしまいます。


 でも本当はどっちなのでしょうか?コーヒーの世界で、患者の立場で探ってみた結果を書くことといたします。恐縮ですが前回と同じ絵を使うことをご容赦ください・・・何せ貴重な絵ですから。




 内因性の病因、つまり自分自身がもっている病気の原因とは、加齢は兎も角、食べ過ぎ、運動不足、疲労、ストレスというようなもので、どれも正常な代謝機能に障害を及ぼします。一番厄介な障害は何といっても活性酸素の過剰生産ですが、食べ物に含まれている抗酸化性の物質がこれを除去してくれるのです(図の緑色部分を参照)。


●過剰にできた活性酸素を除去する代表的な物質はビタミンCとEで、これらは医薬品にもなっている。


 こんなことは今や教科書レベルの話ですが、ビタミンの販売価格が下がったせいで、どのメーカーも拡販意欲に欠けています。替わりに抗酸化サプリメント業界はどこもかしこも「抗酸化、加齢防止、病気予防、美白、シミ抜き、健康長寿・・・」などなどと言って、「ポリフェノール、コエンザイムQ10、セサミン、etc、etc・・・」などと絶叫して大賑わいです。しかし、
●ポリフェノールは抗酸化作用をもっているが、1種類では効き目が弱く、沢山の種類を摂って初めて効果が現われる(詳しくは → こちら)。


 抗酸化性のVCとVEの組合せは、どちらが欠けても効果が失せます。2つ揃って抗酸化性を発揮する組み合わせなのです。同じことがポリフェノールとの組み合わせでも起こります。例えれば、ドミノ倒しと似ています。


●エネルギーを生み出すミトコンドリアのなかで、ポリフェノールが並んでドミノルートを作っている。




 異なる種類のポリフェノールが図2に描いたドミノ牌になって繋がって、抗酸化性の連鎖反応を引き起こします。その連鎖が無事ゴールすると、活性酸素を除去することになるのです。ですから、ポリフェノールは、お茶のとかコーヒーのとか各種野菜のとか、そんなことはどうでもよくて、大事なことは「1つでも多くの種類の野菜を摂ること」なのです。


●「10種類の野菜を摂れば、10種類のポリフェノールを摂れる」・・・これが抗酸化作用のドミノ倒しをゴールまで導く最も簡単な方法である。


 それでも活性酸素が残っていれば、その影響で、大事なタンパク質が固まって、酵素も、受容体も働きません・・・これが酸化障害の始まりで、放置しておくとやがて炎症が起こります(図の緑色の部分をさらに参照)。どうすればよいでしょうか? ここでは、炎症を未然に防ぐ抗炎症ビタミン、同ミネラル、不飽和脂肪酸の必須栄養素が働きますが、実はカフェインの炎症予防効果が最強なのです(詳しくは → こちら)。


 人類の歴史の中で、カフェインを含む2大飲料(コーヒーとお茶)がダントツ人気のその訳は、抗炎症作用にあると思えるのです。
このつづきは、次回にお話しいたします。


(第314話 完)


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