業界の「事情通」を自認するならば、1回は読んだという人も多いに違いない『大丈夫か武田薬品』(ソリックブックス刊 15年)。「巨額投資の上に外国人に占拠されたのは、国家的損失だ」とのアジテーションのコピーが目を引く同書を綴ったのは、セイコー電子工業(現セイコーインスツル)社長や国連親善大使などを歴任した故・原禮之助氏と、その弟で武田薬品不動産初代社長などを務めた武田薬品OBの原雄次郎氏の2人である。
雄次郎氏は周知の通り、武田薬品OB112人で立ち上げた「タケダの将来を憂う会」の代表を務めるなど、義憤に駆られたアグレッシブな活動で、クリストフ・ウェバー社長を筆頭とする同社の上部構造タケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)にとっては目の上の瘤のような存在となっている。
同書が刊行された当時はまだ、ウェバー社長の力量が「未知数」であった上に日本人の心に染み付いた白人コンプレックスも相まって、ウェバー支持派からはいわゆる“トンデモ本”の一種と受け止められた。書評のほうも、バタ臭いと同時に小賢しい輩による「冷笑系」の反応が多かったように記憶している。グローバルな知見を持つオレ達の見解に異を唱えるな、といった主張も目に付いた。