「うんちで“くすり”をつくるのは当然ということをめざす」「良いうんちを集めることが事業を左右する」


 メタジェンセラピューティクス(MGTx)の中原拓社長はこう説く。記者稼業20年弱のなか、ここまで「うんち」という言葉が飛び交った取材は初めてだ。「うんち」という言葉に惑わされがちだが、実は中原社長率いるMGTxの取り組みは世界的にも最先端なのだ。


世界に向け勝負をかける中原社長


 MGTxは20年設立のスタートアップ。役員を含め従業員は24人を数える。山形県鶴岡市に本社を、東京都港区にオフィスを構え、これまでの調達資金は20億円近くに達する。人間の腸に生息する1000種類以上、約40兆個の細菌の集団「腸内細菌叢」に着目。うんちに多く含まれる腸内フローラとも呼ばれるこの腸内細菌叢を利活用し、新しい治療法や医薬品の開発・供給に取り組んでいる。


 腸内細菌叢を使い、似たような取り組みをしているスタートアップとしては、同じく鶴岡市に本社と研究所を置くメタジェンがある。中原社長は「出自は共有し、腸内細菌叢を利活用しているのは同じ。だが、メタジェンは健常者を、当社は患者をそれぞれ対象にしている点が異なります」と説明する。かつてMGTxはメタジェンの完全子会社だったが、21年には資本関係の整理を行い、今では株式の割合は5%未満と「マイノリティ」(中原社長)になっているという。