党厚労部会長経験者が「半減」


 今回の衆院選では、首相の石破茂氏(鳥取1区)が目標に掲げた自公で過半数(233議席)を大きく割り込み、215議席にとどまった。公明党代表の石井啓一氏(埼玉14区)が落選したほか、現職閣僚でも法相の牧原秀樹氏(埼玉5区)らが敗れた。



 元厚労政務官の高鳥修一氏(新潟5区)は、6回目の当選をめざしたが、比例重複なしで敗退した。新潟では立憲が全5選挙区で勝利。元外務副大臣の鷲尾英一郎氏(新潟4区)と元新潟県知事で無所属の泉田裕彦氏(同)は、保守分裂の構図が災いし、ともに落選した。


 参院から鞍替えした元五輪相の丸川珠代氏(東京7区)は政治資金問題で党から処分を受けたことへの謝罪を重ね、「(比例重複はなく)小選挙区一本です。どうかお助けください」と涙の訴えをしたが、早々に落選が確定した。


 元厚労副大臣で、自民党社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(PT)」の座長を務めてきた橋本岳氏(岡山4区)は、立憲の柚木道義氏と7度目の争い。過去は橋本氏の4勝2敗で、前回21年は橋本氏が勝利していたが、今回は「岡山4区から裏金政治を変えよう」と勢いを加速させた柚木氏に敗れた。橋本氏は比例重複していたが、復活当選もならなかった。


 選挙戦で橋本氏は、賃上げ政策を前面に掲げ、次いで防災対策、さらに医療政策への取り組みをアピールした。とくに医療関係者向けの演説では、医薬品のドラッグ・ロスや供給問題、薬価にも言及して支持を求めた。橋本氏の妻で参院議員の自見英子氏(全国比例区)は本誌に「政治不信が極まった。国民の審判を厳粛に受け止める。戦い自体はいい戦いで(橋本氏自身の)政治とカネのところはクリアだった。しかし、最後の政治不信の波の高さに打ち勝つことができなかった」と涙ぐんだ。


 自民党厚労族は、尾辻秀久氏(参院鹿児島選挙区)、衛藤晟一氏(参院全国比例区)ら長老格の引退表明を受け、加藤氏、田村氏らベテランが率いる体制に移行。ただでさえ「中堅層が薄い」ことが問題視されてきたなかで「政治とカネ」の問題が火を噴き、次代を担うはずの中堅世代が大量に落選した。


 自民党が民主党(当時)から政権を奪還した12年以降、現在厚労相を務める福岡資麿氏(参院佐賀選挙区)を皮切りに、12人が党厚労部会長を担ってきた。しかし、今回の衆院選でそのうち丸川氏、高鳥氏、渡嘉敷氏、橋本氏、牧原氏の5人が議席獲得を果たせなかった。与党過半数割れにより、政権の枠組みは一気に流動化する見通し。与党側は、躍進した国民民主党に接触するなど、今後、連立の枠組み拡大への働き掛けを強めるとみられる。立憲は野党連携によってこれを阻止し、政権交代の実現をめざす構え。厚労関係でも、代表代行で元厚労相の長妻昭氏(東京27区)や、薬剤師の逢坂誠二氏(北海道8区)ら、立憲の影響力が増すことが確実な情勢だ。