24年度は2年サイクルの診療報酬改定と、3年周期の介護報酬、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの報酬が同時に見直されたことで、「トリプル改定」と称された。さらに、人工呼吸器などを付けて暮らす「医療的ケア児」に対する支援で、医療と障害の連携強化が図られるなど、これまで以上に3つの連動が意識された。
その半面、障害福祉報酬では、入浴や食事などを提供する「生活介護」や就労移行を支援するサービスに関して、給付適正化策が講じられた。この背景には、障害福祉サービスの予算が右肩上がりで増え続けていることがあり、歳出カットをめざす財務省の圧力が強まっている。今回はトリプル改定のうち、障害福祉報酬の見直しの内容と論点を考えたい。
次期診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定では、物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少するなかでの人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う——。23年6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)には、こうした文言が盛り込まれ、トリプル改定の連動が意識された。予算決着時も3つの改定率が同時に決まり、人材確保のための賃上げ対応が取られた。
さらに、個別項目でも医療と障害の連携が意識された。このうち、医療的ケア児の支援では、医療、障害福祉、児童福祉など幅広い職種での情報共有が求められるため、多職種連携を促す加算などが設けられた。例えば、比較的重度な医療的ケア児が入院する際、在宅生活からの連続性を確保するため、医師や看護師が事前に自宅を訪ね、患者の状態や人工呼吸器の設定などケア状態を把握したケースを評価する加算として、「医療的ケア児(者)入院前支援加算」(1000点)が診療報酬で創設された。
連携の対象は医療的ケア児の支援にとどまらなかった。診療報酬改定では、入退院の施設間連携を促す「入退院支援加算」の対象である「退院困難な要因を有している患者」に、「特別なコミュニケーション支援を要する者及び強度行動障害の状態の者」などが追加された。医療機関と本人、家族、障害福祉サービス事業所による入院前の事前調整を円滑に進める観点に立ち、「入院事前調整加算(200点)」も新設された。入院患者を受け入れる有床診療所向けの「介護連携加算」も「介護障害連携加算」に改称されるとともに、算定要件の対象者に「重度の肢体不自由児(者)」が加わった。
このほか、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医機能」を評価する「地域包括診療科」「地域包括診療加算」でも医療と障害の連携が意識された。いずれも元々、高血圧や糖尿病など慢性疾患の高齢患者に対する継続的かつ全人的な医療を評価するため、14年度に創設された制度であり、24年度改定では、医療と介護の連携を強化する観点に立ち、介護保険のサービス調整などを担うケアマネジャー(介護支援専門員)からの相談に対応する旨が算定要件と施設基準に明記された。これと連動させるかたちで、地域包括診療科と地域包括診療加算の要件として、障害福祉の支援計画をつくる相談支援専門員との連携も加えられた。