承認書絶対主義の弊害
また、再三再四指摘するように、「都道府県のGMP調査体制」のみならず、国際的に見てもおよそ先進国らしからぬ薬機法上の非常に稚拙な政策の影響が大きい。主に時系列的に見たい。
①19年以上経った24年9月30日の通知でようやく見直しの方向が示されたが、05年の2月10日通知のわかりにくさ
②15年の旧化学及血清療法研究所のデータ改ざん不祥事では、もちろん研究所側が悪いが、調査側も調査ロットを乱数で決めないなど国際標準から離れた調査をしていたとの指摘がある(UVランプでデータを古く見せる行為は、調査の可能性のあるすべてのロットについて行われていたのだろうか)
③それを契機とした当時の塩崎恭久厚労相の暴走と言える16年の承認書と製造実態との齟齬探しを求める一斉点検(担当課長は反対したと聞いているが)と当初、一部変更(一変)対象の調査結果も十分想定していたが、数が膨大過ぎ、審査能力が持たないとの判断によるすべて軽微変更対象だったとの行政による明白な「虚偽発表」
④企業側の問題だが、小林化工、日医工、長生堂などによる相次ぐ不祥事。しかし、日医工・長生堂製薬は当時の社長が弁明や説明など一切しないで雲隠れしたのに比べて、小林化工の場合はまだ調査報告書を公表した。また後発品使用促進の政府の旗振りが背景だったのは間違いない
⑤製造方法が承認事項になった後の14年に改正された局長通知「医薬品・医療機器等の回収について」の「法又は承認事項に違反する医薬品・医療機器等は回収すること」の硬直的な運用。米欧ではあまり考えられない、健康影響が想定されない多くの医薬品の回収。20年に始まる日医工による多品目の回収の前だと思うが、旧労働省出身者の監視指導・麻薬対策課長がその通知の文言に従って、自主回収の乱発を起こしたと噂されること、そしてこれらが後発品の供給不安発生の真の原因であるとするGMP専門家の指摘
⑥その後の運用の基準の不明確な製販業者や製造業者の処分
⑦変更管理について、一変が基本とされ、軽微届出で済む範囲や対象の明確化がなかなか進んでいないこと、また代替試験法の国際標準化にも時間がかかっていること
⑧都道府県の問題だが、富山県・徳島県がGMP調査で業者の不正が発見できなかったにもかかわらず、未だに都道府県での調査に拘っている点など枚挙に暇はない。
15、16年頃から始まったと考えられる承認書絶対主義の極端な薬事規制は、常識的には科学規制を理解しない当時の事務官である局長等の主導と考えられるが、技官の責任も免れない。また、医師会はむしろ開業医や高齢者施設で頻発する過剰投薬の解消に向け、強力なリーダーシップを発揮して欲しいものだ。
*「それは行政が差配するべきことなのか」国際医薬品情報、24年6月24日号32〜35頁
**「日経DI」23年5月24日付、https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/trend/202305/579725.html