医師により処方される高血圧治療補助アプリ、「CureApp HT」の販売開始から2年がたった。すでに、数千単位の医療機関で処方されているという。薬剤と異なり診療報酬が直接医療機関に支払われるので、処方へのインセンティブは高いのだろう。
ではこのアプリの費用対効果(コスパ)はどうか。承認の根拠となった無作為化試験「HERB-DH1」を紐解いてみたい①。
この試験では本態性高血圧390例が生活習慣改善指導を受けたうえで、CureApp HTを用いる介入群と用いない対照群に無作為化された。主要評価項目は12週間後の自由行動下24時間収縮期血圧(SBP)低下幅である。
その結果、CureApp HT群では12週間後、使用前に比べSBPは約5mmHg、有意に低下した。ただし対照群との差は有意だが2・4mmHgのみである。ともあれ、試験開始時24時間SBP平均値は145mmHgなのでおよそ140mmHgへ低下したということだろう。ガイドラインでは24時間SBP「130mmHg以上」ならば「高血圧」とされる。つまりアプリを用いても到達血圧は平均値で見る限り、完全に「管理不良高血圧」の域にとどまっている。
また開発会社が自社ウェブサイトで喧伝している「起床時の家庭測定SBP」も、介入前の平均値149mmHgから大幅に下がったとはいえ到達値を計算すると140mmHg弱だ。ガイドラインの示す「高血圧」(家庭SBP:135mmHg以上)からは脱していない。
余談だが、このウェブサイトの内容に問題はないだろうか。HERB-DH1試験の主要評価項目は「24時間収縮期血圧」で、前出の通り対照群に比べた降圧幅は、有意とはいえ2.4mmHgのみだった。しかしこのデータに開発会社の広告ウェブサイトは言及していない。代わりに副次的評価項目のひとつで、かつ大幅に低下した前記の「起床時家庭測定SBP」のグラフのみが大きく掲出されている(24年10月18日時点)。主要評価項目に言及せず、都合の良いデータのみを喧伝。処方薬の広告であれば一発でアウトだろう。