さらに同サイトでは、その「起床後家庭測定SBP」の低下幅を示すグラフに「10.6mmHgの降圧効果を確認」とのキャプションも大書されている。しかしこれは介入前からの変化幅だ。「本当の降圧効果」は対照群との差である「4.3mmHg」のはずだ。一般消費財であれば「優良誤認表示」を疑われかねない。


 言及がなかったデータはまだある。起床後血圧と同様、あるいはそれ以上に心臓血管系疾患抑制に重要である「夜間SBP」がそれだ。2mmHg上昇した対照群と有意差こそ認められたが、CureApp HT群における低下幅は1mmHgのみだった。「夜間血圧を低下させない介入」と知ったらどれほどの医師が採用するだろう。


 前記データは3ヵ月使用後の値だ。しかしCureApp HTは最長6ヵ月まで保健償還される。では6ヵ月間使うとどうなるか。前記論文を見れば、自由行動下24時間SBPの低下幅(主要評価項目)は対照群と有意差なしである。


 コストはいかほどかかるのか。現在CureApp HTは開始時に140点、その後6ヵ月間も7010円を月に1回算定できる。つまり1人あたり6ヵ月で総額4万5000円弱だ。


 6ヵ月間使っても24時間SBPは下がらず、3ヵ月間に限っても夜間血圧は低下しない。そのようなアプリに支払う価値のある金額だろうか。



①EHJ 2021;42:4111